2024年08月09日

朝比奈あすか「いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷」

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 朝比奈あすか 著
 「いつか、あの博物館で。アンドロイドと不気味の谷」
 (東京書籍)


ロボット博物館への校外学習で同じ行動班になった、安藤悠真、長谷川湊、清水陽菜、市川咲希の四人の中学一年生。その博物館には、「美しすぎる」アンドロイドの気象予報士が展示されていた。その日の体験をきっかけに、それぞれがロボットと人間の違いを考える。完璧な美しさや強さを持つロボット、やさしい言葉をかけてくれるロボット、いつまでも死なないロボット……。それでも、ロボットにはない自分だけの心を確かめ、他者と触れ合い、距離感に悩みつつも、気持ちがつながる瞬間を大事に、新しい自分を作っていく――。不思議な縁でつながった、性格や家庭環境の異なる男女四人。彼らの中学一年から三年までの三年間をそれぞれの視点から描いた、現代社会に生きるさまざまな子どもたちの姿を切り取る著者による、中学生たちの日常(いま)の群像劇。−出版社HPより−


たまにはSFっぽい話も良いかな?と思い「本が好き!」で献本申し込みしました。

あらすじをきちんと読んでから申し込めばいいのに、思ったのと内容が違って驚きました。

これは児童書というやつかな?

文字が大きくて行間も広めで、サラッと読み切れました。挿絵は無いですけど。


今現在中学生の方が読むとより深く感じることがありそうです。

むか〜しむかし中学生だった私は懐かしいような、少し苦しいようなそんな読了感になりました。

とはいえ、自分が中学生時代にここまで色々考えていたか?は疑問ですけど。その日その日が過ぎていけばそれで良いという感じだった気がします。


この作品に出てくるのは中学生の男女4人。一年生の彼らが校外学習で偶然同じ班になり、ロボット博物館で一緒に行動している所から始まります。賑やかでクラスでも人気者のグループにいるタイプの湊と陽菜、反対に地味で真面目なタイプの悠真と咲希。

全くバラバラで団結力もなく、一緒に行動するのも難しいグループでしたが、班をまとめることになった悠真が「不気味の谷」について話したことで何となくまとまっていきます。

「不気味の谷」私は聞いたことがなかったので、悠真の説明に他の3人と一緒になって「へえ〜」と感心してしまいました。確かにアンドロイドが人間に似すぎていたら不気味に思うこともあるでしょうね。そういう表現をするのか、勉強になりました。

ここからアンドロイドを研究したり、実は急に進化してアンドロイドが身近な存在になって、日々の暮らしにも深く関わるようになる・・とSFチックな話に天かいしていくのかと思ったら、とにかく青春物語という展開が続きます。


中学生活を送る中で、周りの友達や家族、幼馴染や先生などなど、色んな人と関わって、それぞれがどう考え、どう感じながら行動しているか?が4人の視点で順番に描かれます。

中学生って、まだまだ子どもですけど、自分で考えて行動しないといけないことも増えて、でも出来ないこと(制限されること)も多いですね。小学生の頃は何となく気の合う友だちとふざけ合ってあそんでいたら終了する感じでしたが、中学生になると気の合う友だちとだけ関わるというわけにはいかないです。

例えば部活でもそうですし、他のクラブ活動や塾なんかもそうですが、気が合わない同級生がいても関わらないというわけにもいかず、悩みも増えます。また、次に行く高校は自分で選ばないといけないので、そこでも大きな悩みと不安が。

そして、格差も生まれていきます。成績はもちろん、家庭の事情も関わってきますから、自分が行きたいと思っても行けない場合があり簡単にはいきません。

自分を見つめ直す良いきっかけにはなるでしょうが、この4人のように冷静に考えている子どもはどのくらいいるのでしょう?少なくとも私は何となく進学を決めたなと思い返していました。


もっと色々考えていたら違う人生もあったのかもしれません。・・いや、変わらないか?


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posted by DONA at 15:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:その他

2024年08月02日

木内一裕「小麦の法廷」

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 木内一裕 著
 「小麦の法廷」
 (講談社文庫)※電子書籍


杉浦小麦、二十五歳の女性弁護士。初めての担当は、仲間内で起きた傷害事件。罪を認める被疑者との面会を終え拘置所を出た小麦は、大勢のマスコミに囲まれてしまう。「あなたは、殺人犯のアリバイ作りに協力しているんですか!?」彼女が偶然引き受けた国選弁護の仕事が世間を震撼させる大事件へと変貌する。−裏表紙より−


初めましての作家さんでした。似た名前の作家さんがいるので読んだことがあると思い込んでいました。


主人公は新人弁護士の小麦。彼女は、ほとんどの人がやっているイソ弁をすることなく、いきなり1人で仕事を始めていました。1人だと自由に動けますし、自分で仕事を選べるので便利ではありますが、イソ弁と違って自分で仕事を取ってきて収入を得ないといけないので苦労も多いようです。

また新人なので、弁護の仕方などわからないことがあっても相談する相手に困ります。小麦には相談相手がいるのでそこは良かったのですが、後々の展開ではそれも良くないことがわかるので、なんだか・・。


国選弁護人として初めて担当することになった事件がこの話のメインになります。被疑者は罪を認めている傷害事件。一見簡単そうに思える裁判です。罪を認めているので量刑のみを争えばいいはずでした。

ところがその被疑者が実は他の殺人事件の容疑者でもあり、思わぬ展開になっていきます。

読者はこの話の始まりで、彼が殺人事件を起こしたことを知っているので、どうやって決着させるのか気になって次々読み進めてしまいます。


殺人事件が起きたのと同じ時に、別の場所で傷害事件を起こし、罪を認めて逮捕された被疑者。でも本当は殺人事件を起こしています。

一度逮捕送検した被疑者を「誤認逮捕でした」と認めて釈放するのは実はとても難しいです。

殺人事件の方の証拠が、目撃者しかいないというのも問題で、もっとしっかりした証拠があれば良いのでしょうが、目撃証言だけでは被疑者が見た目を変えてしまえば確証がもてませんから。


被疑者は当然、傷害事件で裁かれたいですし、逮捕した警察も送検した検察もそのまま裁判をしていきたい。でも殺人事件を捜査している警察としては彼を無罪にして殺人事件で逮捕送検したい。

小麦は色んな圧力に悩まされることに。


新人弁護士、しかもイソ弁でもない独立した弁護士にはなかなか荷の重い裁判です。

彼女がどうやって決着させていくか?は書きませんが、うまくやったと爽快になりました。


どうやらシリーズ化されそうな雰囲気で終わったので、もし続きが描かれたら読もうと思います。


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タグ:木内一裕

2024年08月01日

7月のまとめ

たまごの旅人 (実業之日本社文庫)たまごの旅人 (実業之日本社文庫)
旅行は好きでは無いですし、海外には特に行きたくないですけど面白く読めました。添乗員さんって想像するだけで大変な仕事です。大人の我が儘ほどややこしい物はないですね。理不尽なことを言ってくる大人に対して笑顔で対応するなんて尊敬します。好きなことを仕事にするというのが良いことばかりではないのは痛いほどわかります。好きなことだからこそ嫌になることもあります。
読了日:07月02日 著者:近藤 史恵


レペゼン母レペゼン母
明子の気持ちもわかりますが、イライラしてしまう息子の気持ちもわかります。義理の娘くらいの距離感がちょうどいいんでしょうね。ラップ上とはいえ言いたいことが言えて良かった。色々と都合よくいきすぎ感はありますが、面白かったとは思います。ラップがよくわからないですけど。
読了日:07月05日 著者:宇野 碧


時をかける眼鏡 魔術師の金言と眼鏡の決意 (集英社オレンジ文庫)時をかける眼鏡 魔術師の金言と眼鏡の決意 (集英社オレンジ文庫)
アスマの迷いと決心は素晴らしい展開だとは思いますが、事件が起きるまでが長くてちょっと流し読みしてしまいます。残りわずかになってやっと事件が発生し、検視するからこの先の展開があっさりなんだろうと想像が出来るのが残念。もう少しここの部分が盛り上がっても良さそうです。
読了日:07月11日 著者:椹野 道流


木曜日にはココアを (宝島社文庫)木曜日にはココアを (宝島社文庫)
連作短編で、登場人物が次々繋がっているので、しっかり人物を把握しておかないと次の話についていけません。私、名前を覚えるのが苦手なのでだんだん「誰?」となってしまいました。特に大きな山場もなく穏やかに流れる話たちでした。
読了日:07月15日 著者:青山 美智子


神様の子守はじめました。11 (コスミック文庫α)神様の子守はじめました。11 (コスミック文庫α)
相変わらずのドタバタで、子どもたちはひたすら可愛くて、ハラハラしながらもほのぼの。最近は梓の人柄の良さが際立っています。
読了日:07月16日 著者:霜月りつ


銀座「四宝堂」文房具店 (小学館文庫 う 15-2)銀座「四宝堂」文房具店 (小学館文庫)
銀座にある老舗の文房具店の物語。そこにやって来るお客さんたちの人生と文房具の結びつきが面白くて素敵でした。感動的な話もあり、素敵な読書時間になりました。シリーズになっているようなのでまた読みます。
読了日:07月23日 著者:上田 健次


婿どの相逢席 (幻冬舎時代小説文庫 さ 40-2)婿どの相逢席 (幻冬舎時代小説文庫)
仕出屋に婿入りした鈴之助の話。何もしないで暮らせるのが嬉しい人もいるでしょうが、やはり人間って役に立たないと生き甲斐がないんですよね。彼は彼なりに店の役に立ち、読者にも感動を届けてくれました。双子の運命の話は涙無しでは読めませんでした。
読了日:07月29日 著者:西條奈加



全部で7冊。一日で読んでしまった本もあった割には少ないですけど、最近では多い方かな?

特に印象に残ったのは「婿どの相逢席」です。

posted by DONA at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ