
今村翔吾 著
「童の神」
(ハルキ文庫)※電子書籍
「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」-平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛・・などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが―。差別なき世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。第一〇回角川春樹小説賞(北方謙三、今野敏、角川春樹選考委員大激賞)受賞作にして、第十六〇回直木賞候補作。−出版社HPより−
平安時代の物語です。なかなか読むことのない時代ですし、あまり興味もない時代なので、読むのが不安でしたが、なかなか面白かったです。
酒呑童子というこの時代の妖怪、鬼のことを描いたそうですが、酒呑童子を知らないので読んでいてもわかりませんでした。調べてみると、平安時代の鬼のことみたいですね。山に住んでいて、近くの姫たちを攫っては食べていたとか。
すっごい悪者のようですが、この物語では普通の人間のように描かれています。
ただ、純粋な日本人ではなく、母親が白人だったようで、今でいうハーフですね。日本人のノペッと平らな顔ではなく、目鼻立ちのくっきりした顔で、目も黒ではなく青いというのは、この時代ではかなり異質な存在だったでしょう。
しかも、ちょうど日食の時に生まれたということで、周りから忌み嫌われてしまいました。生まれる時代が悪かった・・・。
他にも土蜘蛛と呼ばれる存在の者たちや山奥で暮らす者たちもいて、彼らをまとめて「童」と呼んでいた京人たち。朝廷も彼らの存在を消したくて、何度も何度も軍を差し向けては戦を仕掛けていきます。
鬼と呼ばれた桜暁丸は、童たちをまとめようと力を尽くし、京人に復讐するために立ち上がります。
何度も戦いが起こり、たくさんの童たち、京人たちの命が奪われ、何度も裏切りに合い、でも仲間も増えていき、目まぐるしい展開が続きます。
登場人物も多く、話が複雑になってくるので、読むのに時間がかかってしまいましたが、結末が気になって次々読めました。
同じ人間なのにどうして・・・と常に思いながら読んでいました。物語の中にのめり込むように読んだので、読み終わるとかなり疲れていました。肩に力が入り過ぎます。
朝廷としては彼らの力が怖くて、消したくて必死だったのでしょうが、ちょっとプライドを捨てて、協力を求めたら戦わずに済んだだろうに、とか思うと虚しくもなります。
結末は想像したようにしかならず。この展開で幸せに終わるわけはないのですが、でも「これで終われる」という何ともいえない安堵感はありました。
↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。