
西條奈加 著
「心淋し川」
(集英社文庫)
江戸、千駄木町の一角を流れる、小さく淀んだ心淋し川。そこで生きる人々も、人生という川のどん詰まりでもがいていた―。悪戯心から張形に仏像を彫りだした、年増で不美人な妾のりき。根津権現で出会った子供の口ずさむ唄に、かつて手酷く捨てた女のことを思い出す飯屋の与吾蔵。苦い過去を隠し、長屋の住人の世話を焼く差配の茂十・・。彼らの切なる願いが胸に深く沁みる、第164回直木賞受賞作。−裏表紙より−
「心淋川」「閨仏」「はじめましょ」「冬虫夏草」「明けぬ里」「灰の男」
小さくて淀んでいる川が流れているとある町に住む人たちの人生が描かれています。
表題作では、婚期を迎える若い女性の話が描かれています。小さい頃から実家のことも両親のことも川が流れて日によっては変な匂いがするこの町のことも嫌いだった彼女。何とかして抜け出そうともがいている姿が印象的でした。初めての恋をするのですが・・・。ちょっと物悲しい、でもある意味ハッピーエンドともいえる作品です。
「閨仏」
商家の主人に囲われて、見た目はイマイチながらも愛人として生きて来た女性の話です。ちょっとした才能があればこの時代の女性でも生きていけるってことですね。
「はじめましょ」
偶然出会った子どもが口ずさんでいた歌を聴いて昔を思い出す男性。飯屋を営む彼は昔の恋人を思い出してまた人生をやり直します。
「冬虫夏草」
これはゾッとしました。簡単に書くと、息子から離れられない母親の溺愛話なのですが、そこまでになる過程も怖かったですし、現在も未來も怖すぎでした。
「明けぬ星」
元女郎だった女性の話。苦界からは抜け出せたのに人生がどんよりとしてしまっています。そんな時、昔同じ店で働いていた女性と再会し・・。これも悲しい物語でした。
「灰の男」
ここまでの話で出て来た長屋の差配をしている男性の話。
連作短編のようになっているので、これまで出て来た住人たちも顔を出し、その後の人生が少し垣間見えます。
差配にも過去があって、どうなっていくのか?心配になる話でした。
直木賞というのがどんな賞なのかよくわかりませんが、とにかく賞をとるのは納得の作品でした。
淀んだ川とそこに暮らす貧しい人たちの人生を重ね合わせて描かれるのが、物悲しくもあり、ちょっと怖い所もあり、でも精いっぱい生きているから明るい未来も見えてきて。
短編ですがそれぞれに関連もあって、読み応えもありました。
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