2023年05月25日

ホリー・ジャクソン「自由研究には向かない殺人」

13505.jpg

 ホリー・ジャクソン 著
  服部京子 訳
 「自由研究には向かない殺人」
 (創元推理文庫)※電子書籍


高校生のピップは自由研究で、自分の住む町で起きた17歳の少女の失踪事件を調べている。交際相手の少年が彼女を殺して、自殺したとされていた。その少年と親しかったピップは、彼が犯人だとは信じられず、無実を証明するために、自由研究を口実に関係者にインタビューする。だが、身近な人物が容疑者に浮かんできて・・。ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、傑作謎解きミステリ!―出版社HPより―


初めましての作家さんです。文章は読みやすかったですし、展開も面白かったです。ただ、題名がどうもしっくりこない感じがしました。それは作家さんのせいではないかもしれませんが「自由研究」と聞くと日本人はどうしても夏休みの宿題のイメージをもつと思うんですよね。もっと軽いイメージ。なのに、殺人事件の調査を自由研究で!?と不思議な感じがしました。というか、「自由研究に向く」殺人事件なんてないでしょう!と思いますよね。

読み始めると「自由研究」というよりも「卒業論文」に近いというか、もっと真剣で重い宿題だとわかります。世界情勢について自論を述べるような。物語の中では「自由研究で得られる資格」「大学入学に必要な試験を受けるのと並行して独自に行うプロジェクト」だと書かれています。それだけ重要な課題ということです。


主人公のピップが選んだのは5年前に失踪した17歳の少女の事件についてでした。学校に提出した計画書には「メディアが報道することが事件に重大な役割を果たしていることについて考察する」と書きましたが、ピップがやりたいのは事件を解決することでした。

失踪した少女は殺害されたと目されていて、容疑者となったのは彼女と付き合っていた男性でした。彼は彼女が失踪後、警察から取り調べを受けた直後に自殺していました。被疑者死亡で解決したとされているわけです。

ピップは過去に彼に助けてもらったことがあったため、どうしても彼が犯人だとは信じられず、課題をきっかけに調査に乗り出したわけです。

殺人事件の捜査を高校生がやるなんて無謀なことを・・と思っていたら、何とも行動力があり、根性もあり、どんなに脅されても冷たくあしらわれてもへこたれません。

ただずっと気になってしまったのは、失踪した少女のことをみんな「死んだ」と思っていること。遺体は見つかっていないわけで、もしかしたらどこかで生きているかも?と誰も思わないんだな、と不思議でした。もしかして生きているんじゃない!?と予想したのですが、まあ結末は読んでのお楽しみ。


そしてやっぱりイギリスの学生は大人だなと感心、と同時に怖い。飲酒はもちろん、ドラッグも当然という世界。真面目でそういう物と無縁という学生もいるのでしょうが、使用率は日本より確率はかなり高そうです。そんなに早く大人にならなくても良いのに・・

シリーズ化しているようなので、2作目も読むつもりです。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

2023年05月16日

平岡陽明「イシマル書房編集部」

9784758441278.jpg

 平岡陽明 著
 「イシマル書房編集部」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


満島絢子は念願かなって神保町の小さな出版社にインターンとして採用された。しかし、当のイシマル書房は親会社から「半年で経営が改善されなければ他社に株を売却する」と最後通告を受ける―会社存続の危機に、石丸社長を中心に、理由あり作家、引退していた編集者、活版職人で絢子の祖父、元ヤンキーの営業マン、全国の書店員・・など「小説」を愛する人々が立ち上がった。果たして起死回生のベストセラー小説は産まれるのか?書き下ろし長編。−出版社HPより−


初めましての作家さんです。文章的には読みやすかったですが、展開はあまり好きでは無いかも。


出版社の裏側的な話だということで、興味津々で読み始めました。出版社と書店、作家の関係性や契約の仕方などそういう裏側の部分はとても興味深く、面白く読めました。

小さな出版社が存続の危機。どうやって立て直すか! これは本当に楽しみな展開ではあったのですが、その後の流れがあまり好みではありませんでした。

何でもうまくいきすぎな展開は、それでも良かったのですが、だったらあの人はどうしてあんな結末になったのかが納得できず。読んでいない方にはわからないですね、すみません。でもネタバレになるので書きません。


理由ありの作家さんに原稿を頼むのは話題作りにも良いですし、実力があるならきっと売れるだろうこともわかるのですが。せっかく主人公が素敵な能力をもっているのにそれがあまり生かされないのも残念でした。

私も登録している読書メーターが出てきたのは親近感が湧きましたけど、そこももっと何か展開があれば良かったかな?と思います。

面白くないわけではないのですが、ちょっと不満の残る作品でした。


↓ ランキングに参加中 お帰りの際にポチッ×2と押して行って下さると嬉しいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

タグ:平岡陽明
posted by DONA at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:その他

2023年05月12日

今野敏「クローズアップ」

9784087453379.jpg

 今野敏 著
 「クローズアップ」
 (集英社文庫)


週刊誌の記者が何者かに殺された。偶然その場に居合わせた報道番組「ニュースイレブン」記者の布施は事件直後の現場撮影に成功、翌日のニュースで映像が流される。一方、継続捜査を受け持つ捜査一課の黒田はある暴力団の組員が殺害された事件を追う中で、記者殺害との奇妙な符号に気付く。しかし、二つの事件を繋ぐカギは踏み込んではならない聖域だったー。大人気”スクープ”シリーズ第3弾。−裏表紙より−


前作を読んだのが2015年ということは8年くらい前。当然、細かい部分は忘れてしまっています。
とはいえ、布施のことは覚えていますし、性格や立場なども覚えてはいました。それさえ覚えていれば大丈夫でした。


今回は、週刊誌の記者が殺害された事件。偶然近くにいたという布施が、事件発覚直後の現場の映像を撮影しました。それを担当しているニュース番組で流すことになるのですが、その映像を撮影したのが布施だということで、周りが色々な推測をしては問い詰めに来ます。

もしかしたら、被害者の記者を追っていたのではないか?加害者のことを知っているのではないか?何か目撃したのでは?などなど。嗅覚が優れている布施だからこその憶測ですが、聞かれる度に「偶然だ」と言い続けます。実際にそうだったようですが、偶然とはいえスクープ映像が撮れてしまうのが彼らしいです。


週刊誌の記者というと色んなゴシップ記事も書くので、多方面から恨まれているだろうと思われ、捜査は難航します。少しずつ事件が解明されていくとどうやら簡単に解決しそうにない展開になっていきます。

何だか大掛かりで大物の匂いもしてきますし、数年前の殺人事件との絡みまで見えてきました。


ニュース番組を作っているテレビ局のトップからの圧力と、刑事からの協力依頼。たくさんの思惑が重なっていきますが、相変わらず飄々とマイペースに動く布施の姿がある意味頼もしくもありました。


既に5作目も文庫化されているこのシリーズ。早く残り1冊を読まなければ!


<スクープシリーズ>
「スクープ」
「ヘッドライン」


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

posted by DONA at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:今野敏

2023年05月09日

買った本

13505.jpg

 ホリー・ジャクソン 著
  服部京子 訳
 「自由研究には向かない殺人」
 (創元推理文庫)※電子書籍


面白そうだったので購入。確かに面白かったけど長かった〜!


9784087453379.jpg

 今野敏 著
 「クローズアップ」
 (集英社文庫)


シリーズ3作目。2作目以降かなり放置していたので久しぶりに購入。


9784758441278.jpg

 平岡陽明 著
 「イシマル書房編集部」
 (ハルキ文庫)※電子書籍


初めましての作家さんです。面白そうだったので購入。


2023年05月02日

4月のまとめ

クローズアップ (集英社文庫)クローズアップ (集英社文庫)
シリーズ3作目。今野さんはシリーズが多すぎて、このシリーズはちょっと追うのを忘れていました。布施以外の人物は、そういえばいたね〜という程度にしか覚えていませんでしたが十分楽しめました。記者としてガツガツしていないようで実は記者らしい記者な布施はプロだなと感心。続きも楽しみです。
読了日:04月06日 著者:今野 敏


イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)
うまくいきすぎず、でもうまくもいっていいバランスだったかな?寂しい展開があったのは残念。そこは無しでも良かった気はします。どこまでもハッピーエンドにした方が読みやすかったかも。紙の本が無くなると困る!と思いつつ、これも電子書籍で読んでしまった。でも読書はやめない!
読了日:04月12日 著者:平岡 陽明


自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫 M シ 17-1)自由研究には向かない殺人 (創元推理文庫)
ページ数が多かったのでなかなか読み終わらなかったですが、内容はスピード感があって面白かったです。やっぱり海外の高校生は怖い。飲酒はもちろん、ドラッグも普通なんですね。車の運転も。そんなに早く大人にならなくてもいいだろうに。何だか可哀そうな事件でしたし、動機を考えるといたたまれないです。しかし、学生が事件を解決してしまって、警察の存在意義はなんだろう?と微妙な気分になりました。シリーズ化されているようなので続きも読みたいです。
読了日:04月24日 著者:ホリー・ジャクソン




たったの3冊。最後の本が長かった・・。

posted by DONA at 14:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ

2023年05月01日

柴田よしき「さまよえる古道具屋の物語」

51M8KgqFy6L._SX342_BO1,204,203,200_.jpg

 柴田よしき 著
 「さまよえる古道具屋の物語」
 (文春文庫)


挿絵と文がさかさまの絵本。硬貨投入口がない貯金箱。ポケットの底がぬけているエプロン。把手のないバケツ。その古道具屋の店主は、役に立たないものばかりを、押し付けるように客に売る。その目論見は何なのか?バブル以降激しく移り変わる世相を背景に、モノと心の間で翻弄されながらも懸命に生きる人々を描く傑作長篇。−裏表紙より−


題名はともかく、表紙の絵が気味悪い感じで読むのをためらってしまう雰囲気です。読み始めると特に怖さは無いのですが、古道具屋の存在がどんどん怖くなっていきました。

連作短編になっていて、1話毎に登場人物は変わり、話も変わるのですが、時々それぞれの話が交わります。なので、1話読み終わったからといって内容を忘れてしまうと後で困ります。

2話目は、阪神淡路大震災のことが描かれていたので、早々に断念。あまり細かく描写されるとその時に戻ってしまう感覚がして読めないんです。だからその話に出てくる人物については後で出てきても何となくしかわからない状態で読み進めました。それでも問題なかったですけど。

3話目以降は、謎の古道具屋の客となった人たちが語る話が続きます。ポケットの底がぬけているエプロンを買った作家は、1話目に出て来た人物ですが、1話目のほのぼのとした雰囲気から一転、エプロンによってもたらされた数々の不思議な現象について語られ、始めは幸せそうな家族がどんどん転落していく様子が読んでいて怖くなりました。本人も言っているようにエプロンのせいだけではないでしょうが、人間の欲望は終わりがなく、それに惑わされると悪い方向に落ちていくものなのだと改めて思わされました。


そして4話目以降から次々と古道具屋の謎が明かされて行きます。欲深い人間に罰を与えているのだとして、なぜそんなことをしないといけないのかがわかりません。もしそんな罰を与える存在だとすれば正体は神なのか?と思うしかないですが、そのオチはここまでの流れから考えて弱すぎるので違うだろうと思いますし。

古道具屋の正体とその存在意義についてはネタバレになるので書きませんが、なるほど、と納得できました。ただまあ、ここまでまわりくどくやらなくても良かったのでは?とも思います。でもそれも正体があれだから仕方ないのかもしれません。


ファンタジーではありますが、人間の闇の部分や深い悩みや生き方について濃く描かれている、ある意味この作家さんらしい作品でした。


↓ ランキングに参加中 ポチッ×2と押して下さるとうれしいです。

   人気ブログランキングへ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ



posted by DONA at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:柴田よしき