
知野みさき 著
「深川二幸堂菓子こよみ」
(大和文庫)※電子書籍
「餡子だけじゃつまらねぇ。菓子を作れよ、孝次郎ー」深川で菓子屋「二幸堂」を始めた兄・光太郎と弟・孝次郎。ほんのり甘酒香る薄皮饅頭「斑雪」、桜の花弁を模した上生菓子「恋桜」、黄身餡が贅沢な「天道」と十四夜の月の如く控えめな甘さの「幾望」、柳の青葉が風情涼やかな錦玉羹「春の川」、薄紅色の白餡大福「紅福」。ー不器用な職人・孝次郎の作るとびきりの菓子が、人と人とを繋げ、出会いをもたらし、ささやかな幸福を照らし出すー。江戸の菓子屋を舞台に描かれる、極上の甘味と人情と、つたない恋。兄弟の絆と店を支える人々の温かさに心震える珠玉の時代小説!−出版社HPより−
物語の始まりは火事の様子から。逃げ出したはずの兄が大事な道具を取りに火の中に飛び込みます。それを助けるために弟も戻り、火事に巻き込まれてしまいます。そこへやって来た父親。彼は2人が火に飲まれているのを見て、弟に「すまない」と言って兄を助けようとします。何とも切ない始まり方です。
結局、兄弟も父親も助かったことが次の話でわかるのですが、危機的状況の中で、2人の息子のうち兄だけを助けようとした、弟を見殺しにしようとした父親の心境を思うといたたまれません。もちろん、謝られて置き去りにされそうになった弟の気持ちも辛い。でも弟は父親に対して何の恨みも抱いていませんし、兄を助けようとした父の気持ちがわかっていました。兄のことも恨んではいません。
2人とも不器用だったせいで話し合うことが出来ず、何となく気まずい雰囲気のまま父親が他界してしまいます。そこまでが何とも切なかった・・。かなり短縮して圧縮して語られるのでページ数は少ないですが。
物語のメインは、弟が奉公に出ている店から兄が引き抜いて来て一緒に店を始める所から始まります。いつの間にか奉公に出ていた弟。ここは突然の展開にちょっとびっくりしました。しかも、奉公先でかなり年月が経ち、和菓子職人として良い腕を持っているのに、新しい店主に嫌がらせをされて餡子しか作らせてもらえなくなった所から始まります。なぜ嫌がらせをされているのか?などの事情も足早に描かれています。読者としてはそこは同情するよりも「へえ〜そうだったんだ」という程度の感想しか出ないです。
そして、兄が迎えに来て和菓子店を兄弟で開くことに。兄・光太郎と弟・孝次郎で「二幸堂」良い名前です。数年間餡子しか作らせてもらえなかった孝次郎が張り切って和菓子を作って、光太郎が持ち前の人なっつこさと明るさで売っていきます。
お互いに気を使いながら、でも言いたいことを言い合うようにしてうまく店を切り盛りしていく2人。余裕が出来てからは見習いを兼ねて従業員も雇えるようになりました。その女性が良い味を出していて、一気に好きになりました。
彼女も入れてますます順調な二幸堂。色々と問題は巻き起こりますが、美味しそうな和菓子と、兄弟の人柄、お客さんの話など面白い部分がたくさん。
恋愛模様が鼻に付きますが、まあこれくらいなら何とか我慢できそうです。
まだシリーズは続いているようです。早めに続きを読んでいきます。
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