
高田郁 著
「駅の名は夜明 軌道春秋U」
(双葉文庫)
妻の介護に疲れ、行政の支援からも見放された夫は、長年連れ添った愛妻を連れ、死に場所を求めて旅に出る(表題作「駅の名は夜明」)。幼い娘を病で失った母親が、娘と一緒に行くと約束したウイーンの街に足を運ぶ。そこで起きた奇跡とは?(「トラムに乗って」)。病で余命いくばくもない父親に、実家を飛び出し音信不通だった息子が会いに行くと・・(「背中を押すひと」)。鉄道を舞台に困難や悲しみに直面する人たちの再生を描く九つの物語。大ベストセラー『ふるさと銀河線 軌道春秋』の感動が蘇る。−裏表紙より−
「トラムに乗って」「黄昏時のモカ」「途中下車」「子どもの世界 大人の事情」「駅の名は夜明」「夜明の鐘」「ミニシアター」「約束」「背中を押すひと」
Uとはなっていますが、Tも短編だったので、どちらから読んでも問題ないですし、つながりもありません。ただ、旅や鉄道に関する物語の数々という意味でシリーズになっています。
どれも素敵なお話でしたが、特に印象に残ったのは「トラムに乗って」「黄昏時のモカ」「駅の名は夜明」「ミニシアター」です。
「
トラムに乗って」
1話目から海外の話でびっくりしました。舞台はウィーン。おしゃれな街というイメージですが行ったことはありません。
娘を亡くした母親が、娘と一緒に行こうと約束していた場所がウィーンでした。病気で娘を亡くし、夫婦間もぎくしゃくして離婚するしかないかと思っている時に1人で行くことになった旅行。新婚旅行で行ったウィーンを旅していたら奇跡が起きます。途中も涙しましたが、最後も涙。きっと今後の人生うまくいってくれるだろうと思える嬉しい涙でした。
「
黄昏時のモカ」
1話目と繋がりがある話です。1話目で出会っていた老婦人がいるのですが、その人が今度は主役となります。このまま連作短編になるのかと思ったのですが3話目は全く違う話です。
この老婦人は夫を亡くし、その遺影を持って思い出のウィーンを一人で旅しています。そこである外国人男性と出会うのですが、その人との会話がカッコいいというか素敵でこんな風に年齢を重ねたいものだと思わされました。この話でも最後に感動が待っています。
「
駅の名は夜明」
表題作だけあって感動する話でした。ただ、読むのが辛い場面が多かったです。最後が何とかなってくれたので良かったですが。
老夫婦がお互いに支え合って生きていくのは本当に大変。子どもが親の介護をするのも大変なのに、自分も老いているのに介護だなんてどれほど大変なことか。介護をしたことがない私がいうのも変ですけど。国の制度でなんとか助けられないものでしょうか。色々考えさせられました。
「
ミニシアター」
珍しくちょっと笑えるコミカルな話でした。でもこの作家さんらしく人との繋がりや人の温かみなどが感じられる内容になっていて、最初はちょっと顔をしかめる感じですが途中からはずっとほほえましく読みました。車内でのこんなやりとり、何だか素敵です。
普段、この作家さんの壮大な時代小説を読んでいると、ちょっと物足りない気はしますが、短編とはいえどれも感動できる良い話ばかりです。一度読んでみては?
<軌道春秋シリーズ>
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