2022年10月27日

高田郁「あきない世傳 金と銀<十三> 大海篇」

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 高田郁 著
 「あきない世傳 金と銀<十三> 大海篇」
 (ハルキ文庫)


宝暦元年に浅草田原町に江戸店を開いた五鈴屋は、仲間の尽力を得て、一度は断たれた呉服商いに復帰、身分の高い武家を顧客に持つことで豪奢な絹織も扱うようになっていた。だが、もとは手頃な品々で人気を博しただけに、次第に葛藤が生まれていく。吉原での衣裳競べ、新店開業、まさかの裏切りや災禍を乗り越え、店主の幸や奉公人たちは「衣裳とは何か」「商いとは何か」、五鈴屋なりの答えを見出していく。時代は宝暦から明和へ、「買う手の幸い、売っての幸せ」を掲げて商いの大海へと漕ぎ進む五鈴屋の物語、いよいよ、ここに完結。−裏表紙より−


長かったシリーズもいよいよ最終巻。前作の様子を見ると終わりそうにもない感じでしたが、最終巻を読み始めてもその思いは変わらず。後半どころか終わる手前くらいまで問題山積で本当に最終巻なのか?と心配になりました。


前作の終わりで気になっていた衣裳競べは色々な妨害がありつつも、五鈴屋らしい衣裳で勝負に出て、モデルとなった女性が活きるような素晴らしい終わり方でした。優勝とはならなくても、五鈴屋の名前をしっかり残せたのがさすがです。

そしてもう一つの問題となっていた、庶民と身分の高い武家との買い物方法について。店側としては、高い商品を扱えて売ることが出来るのは嬉しいことですし、商売としてありがたいことではありますが、この時代、庶民と身分の高い武家の人が同じ空間に立っているだけでも息が詰まる状況。

楽しいはずの買い物の時間が苦痛になっては、お客にとって悲しいことですし、お客が離れていく原因にもなってしまいます。それを防ぐにはどうすれば良いのか?と悩んでいた幸でしたが、こちらもうまく2つを分かれさせて、店も商売も広げることができました。

・・と良いことばかりで終わればいいのですが、そうはいかないのが高田郁作品。


うまく行き始めると邪魔をするものが現れます。しかもその相手は幸が信頼していたあの人。結構早い段階で怪しいとは思っていましたが・・。まあこれにもオチがあったのでその辺は読んでみてください。


ずっと気になっていた妹・結との関係は、最終巻になってもほぼ進展なしで、このまま終わるのか??と思ったらこちらも最後に大きな出来事が。でもこの問題に関しては残念ではありました。まあ姉妹なんて意外とこんなものかもしれません。


最後の最後は心がじ〜んと温まるような話もあり、ほろりと涙して終わりました。

全てがすっきり終わったわけではないので、まだまだ読んでいたい気はしましたが、とりあえず番外編的な物を書いてくださるそうなので、それを楽しみに待つことにします。

また新たなシリーズも書いてくれるかな?楽しみです。


<あきない世傳金と銀>
「源流篇」
「早瀬篇」
「奔流篇」
「貫流篇」
「転流篇」
「本流篇」
「碧流篇」
「瀑布篇」
「淵泉篇」
「合流篇」
「風待ち篇」
「出帆篇」


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2022年10月25日

北大路公子「生きていてもいいかしら日記」

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 北大路公子 著
 「生きていてもいいかしら日記」
 (PHP文庫)※電子書籍


40代、独身。好きなもの、昼酒。座右の銘は「好奇心は身を滅ぼす」。“いいとこなし”に見えるけれど、なぜかおかしいキミコの日々。
「結婚しないの?」と聞かれた時の答え方、圧力鍋との15年戦争、父のゴミ分別の不可解なルール、朝はなぜ眠いかについての考察など、日常の出来事に無駄な妄想で切り込んでいく。読んでも何の役にも立たないけれど、思わず笑いがこみあげて、不思議と元気が出てくるエッセイ集。。
−出版社HPより−


苦手なエッセイですが、ネットでの感想を読んで面白そうだったので読んでみました。初めましての作家さんです。


読み終わってしばらく経っていますが、改めてあらすじを見てびっくりしました。キミコさんって40代だったのね??勝手に私より年上だと思っていました・・。

40代にしてこの枯れ方はどうなんだ!?

ここまで堕落した生活をしていたらそりゃ周りは色々言いますわね。まだ若いですから。


普段、私は年齢を気にせず生活していますが、やはり40代と50代は違うなと感じることが多々あります。体力的なこともですけど、脳的なことも。

今まででは考えられないようなミスをしますし、物を失くしたこともあります。しかもなぜ失くしたのかもわからない状態。自分でショックなことがたくさんあります。

毎日ちゃんと働いていますし、昼酒も飲みませんし、食事もしっかり食べていますがこんな感じですから、キミコさんは50代になったらどうなるんだろう?と他人事ながら心配になってしまいます。


生活ぶりは大丈夫か!?って感じですが、考えていることはさすが作家さんだけあってクスクス笑ってしまうことばかり。かなり短い話がたくさん詰まっているのですが、電車で読んでいると笑いをこらえるのに必死になるくらいでした。

各話の題名からして笑えます。例えば「乳の立場がない」「圧力鍋と私の十五年戦争」「中年カップル、ドームに行く」「開け、頭の蓋」「朝はなんで眠いのよ」・・

どんな話が待っているのかワクワクしながら読むと、想像を超えてくる内容なので笑えます。まあ題名から想像できる話なんて無いんですけどね。


なかなか面白かったのでまた作品を読んでみようかな?と思う反面、この生活ぶりを読んで心配になるのも嫌だと思う所もあって、しばらく様子をみようと思います。


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タグ:北大路公子
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2022年10月20日

西條奈加「芥子の花 金春屋ゴメス」

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 西條奈加 著
 「芥子の花 金春屋ゴメス」
 (新潮文庫)


人が月に住む近未来の日本に、独立を宣言し、鎖国状態の「江戸国」が出現した。上質の阿片が海外に出回り、その産地として日本をはじめ諸外国から槍玉に挙げられた江戸国。老中から探索を命じられた「金春屋ゴメス」こと長崎奉行馬込播磨守は、阿片を祭祀に使用する異人たちが住む麻衣椰村に目をつけ、辰次郎や松吉に真相の究明を命じるがー。−裏表紙より−

なかなか続きが見つからず、これはもう古本屋でしか見つからないだろうと諦めかけていたのですが、やっと新装版が出版されました。やはり大きな賞を取ると違いますね〜。ありがたいことです。この流れで「はむ・はたる」も新作を書いてもらいたいものです。もちろん、ゴメスシリーズも。

前作を読んだのが2013年。ということは9年前! 細かい部分はすっかり忘れていましたが、近未来の話であること、日本の中に鎖国状態の「江戸」という国があること、奉行の話ということは覚えていました。

近未来でありながら、江戸国は武士がいる昔の世界を作り上げています。江戸時代で止まっているような国なので、科学の進化もない状態。病気になると治療方法を求めて江戸国を出ていく人もいるようです。


題名にあるゴメスというのは奉行のあだ名です。ただ、女性だということは途中まで忘れていたんですけど。前作でも途中で女性だと知って驚いた覚えがあります。

実は人間でもないんじゃないか?と思うほどの容貌と言動なんです。暴力的ですし、酒豪ですし、言葉遣いもなかなか・・。


鎖国状態の江戸国に持ち上がったのは、麻薬の密輸問題。日本や他の国に出回る阿片が、江戸国で作られて密輸されているのではないか?と言われます。捜査に乗り出したゴメスは、とある村に目を付けます。

阿片を祭祀に使用するその村で作られているのではないか?と考えるわけですが、そこから一筋縄ではいかない捜査が始まります。

鎖国状態にある江戸国から持ち出すということは、何か大きな力が働いているのでは?と考えるのが自然です。

捜査を進めるうちにとある過酷な場所が浮上します。部下を潜入させることになったのですが・・・。


結局、過酷な捜査は部下に任せっきりのゴメス。部下の報告を聞いては叱咤激励(いや、叱咤のみ)しています。でも最後の最後には全て持って行くという美味しい役どころでした。

これはまだまだシリーズが進められそうです。ぜひ次も書いてもらいたいと思っています。


<金春屋ゴメスシリーズ>
「金春屋ゴメス」


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2022年10月18日

今野敏「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」

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 今野敏 著
 「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」
 (幻冬舎文庫)


都内で起きた刺殺事件の捜査本部に現れた東京地検特捜部の検事、灰谷。一方的に情報提供を求めたうえ、自身が内偵中の野党議員の秘書を犯人と決めつけ、身柄を拘束する。警視庁捜査一課の樋口は証拠不十分を主張。だが、灰谷が逮捕に踏み切って・・。常に謙虚で同僚や家族も尊重する等身大の刑事が、巨大機構の狭間で己の信念を貫く傑作警察小説。−裏表紙より−


細かい部分を忘れてしまったので、いつか再読して感想を書く予定です。


<警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ>
「リオ」
「朱夏」
「ビート」
「廉恥」


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2022年10月12日

買った本

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 津村記久子 著
 「とにかくうちに帰ります」
 (新潮文庫)※電子書籍



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 原田ひ香 著
 「三千円の使いかた」
 (中公文庫)※電子書籍



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 柴田よしき 著
 「あおぞら町 春子さんの冒険と推理」
 (コスミック文庫)


相変わらず読みやすい文章でした。


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 今野敏 著
 「焦眉 警視庁強行犯係・樋口顕」
 (幻冬舎文庫)


8月の始めに読み終わっていたのに書き忘れ。感想もまだでした。

2022年10月04日

上橋菜穂子「風と行く者 守り人外伝」

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 上橋菜穂子 著
 「風と行く者 守り人外伝」
 (新潮文庫)


つれあいの薬草師タンダと草市を訪れた女用心棒バルサは、二十年前、共に旅した旅芸人サダン・タラムの一行と偶然再会する。魂の風をはらむシャタ“流水琴”を奏で、異界“森の王の谷間”への道を開くサダン・タラムの若い女頭エオナは、何者かに狙われていた。再び護衛を頼まれたバルサは、養父ジグロの娘かもしれないと気づいたエオナを守るため、父への回顧を胸にロタ王国へと旅立つが。−裏表紙より−


久々のバルサは更に歳を重ね、落ち着いた中年の女性になっていました。タンダとも良い距離間で信愛しあい、仲良く暮らしているようで、それが読めただけでも幸せな時間でした。


20年前にジグロと共に護衛として旅を共にした、旅芸人サダン・タラムの一行と再会し、偶然助けたことで再び護衛として旅を共にすることになったバルサ。

彼らと旅をしながら、20年前のことも思い返しているので、読者もバルサと共に20年前に行ったり、現在に戻ったりする感じになります。

サダン・タラムという旅芸人は音楽を奏で、踊ることで人々に平和と幸せをもたらしながら旅をしているのですが、その頭にしか奏でることが出来ない特別な琴を使い、異界への扉を開くことも出来るため、とある国へ行くことになりました。

その異界への扉を開けて欲しくない誰かによって命を狙われることになった頭・エオナを守りながらの命がけの旅。

実はこのエオナはもしかしたら養父・ジグロの娘かもしれない、というバルサにとっては複雑な状況です。


20年前の苦い経験も思い出しつつ、今の頭であるエオナをしっかり守り、励まし、任務を遂行していくバルサは、中年になってもカッコいい女性のままでした。

口では冷たいことを言いますが、誰よりも熱い思いを秘めていて、その言動に励まされる人がたくさん。読者ももちろん励まされます。


旅を終えて帰ったバルサを出迎えるタンダ。この最後の場面もとても素敵でした。

今回、タンダはほとんど出番が無かったので、またいつか2人の活躍が読みたいです。


<守り人シリーズ>
「精霊の守り人」
「闇の守り人」
「夢の守り人」
「虚空の旅人」
「神の守り人 上−来訪編」
「神の守り人 下−帰還編」
「蒼路の旅人」
「天と地の守り人 第一部ロタ王国編」
「天と地の守り人 第二部カンバル王国編」
「天と地の守り人 第三部新ヨゴ皇国編」
「流れ行く者 守り人短編集」
「炎路を行く者 守り人作品集」

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2022年10月03日

9月のまとめ

あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇 (ハルキ文庫)あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇 (ハルキ文庫)
終わってしまった・・。最終巻の前半というか終わるギリギリまで色んな問題が起きて、本当に終われるのか?と心配になりましたが、何とか丸く収まってくれました。妹との仲はすっきりとはいきませんが、まあそういうこともあるかな。最後はほろりとさせられました。まだ追加で描いてくださるそうなのでそれを楽しみにしておきます。
読了日:09月03日 著者:高田 郁


あおぞら町 春子さんの冒険と推理 (コスミック文庫)あおぞら町 春子さんの冒険と推理 (コスミック文庫)
1話目が読んだことあったのでダブったか?と心配になりましたが、2話目からは未読で安心しました。アンソロジーで描いていた物だったようです。サクッと読めて面白かったです。
読了日:09月07日 著者:柴田 よしき


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)とにかくうちに帰ります (新潮文庫)
何で読もうと思ったのかよくわかりませんが、読んでいてもこれは何だろう?と疑問がずっとありました。表題作以外の話はエッセイのような雰囲気で何が描きたいのかよくわからず、表題作はふぅ〜んって感じでした。大雨の時に電車が止まって帰宅難民になって・・みたいな東京の映像をよく見ますが、こうやってみんな無理やり帰ろうとするんだね、と変な感心をしました。
読了日:09月12日 著者:津村 記久子


三千円の使いかた (中公文庫 は 74-1)三千円の使いかた (中公文庫)
おばあちゃんの琴子を始め、そのお嫁さんも魅力的な人ばかりでした。お金をどうやって使うのか、どうやって手に入れて貯めるのか、どんな節約方法があるのかなど、お金にまつわる話で参考になることもありました。今の世の中、いつどうなるかわからないので、ある程度貯めないといけませんが、使わな過ぎるのもいけないでしょうし、お金とうまく付き合っていけたら良いですね。
読了日:09月20日 著者:原田 ひ香


時の鐘を君と鳴らそう 星の海を君と泳ごう (光文社文庫)時の鐘を君と鳴らそう 星の海を君と泳ごう (光文社文庫)
何だろう?よくわからない話でした。思いっきりSFなんですけど、恋愛要素も強くて、しかも「ノダ」って何??自分の理解力の無さが悪いんでしょうけど。どなたかの感想が読んでみたいです。
読了日:09月28日 著者:柴田 よしき



全部で5冊。特に印象に残ったのは「あきない世傳金と銀 大海篇」です。
posted by DONA at 14:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ