2022年08月30日

今村翔吾「鬼煙管 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「鬼煙管 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社)※電子書籍


「人も同じ、身分は違えども煙草(たばこ)の銘柄ほどのもの」煙管(きせる)の吸い口を見つめ、平蔵(へいぞう)は人の儚(はかな)き生を思い、正義と悪との境(さかい)を憂(うれ)えていた――。京都西町奉行長谷川(はせがわ)平蔵は、火を用いた奇(き)っ怪(かい)な連続殺人を止めるため、最も頼りにする江戸の火消、松永源吾(まつながげんご)を京に呼ぶ。源吾は平蔵の息子・銕三郎(てつさぶろう)と真相に迫るが、やがて銕三郎が暴走し――。勇壮な男たちが京の街を駆け抜ける!−出版社HPより−


今回の話は京が舞台です。今と違って江戸(東京)から京(京都)に行くのは簡単ではありません。何日もかかってしまうというのに、それでも江戸から松永を呼び寄せようというのですから、いかに平蔵の信頼が厚いかってことです。

今回も当然、松永を始め火消の人たちは大活躍、そしてとてもかっこよかったですが、今回一番驚いたのは、今まで読んでいた長谷川平蔵が、私のよく知っている「鬼平」とは違っていたことです。

まさかその父親だったなんて!

今回、事件を引っ掻き回すようなことになった平蔵の息子が、実は「鬼平」だったようです。えー!?って叫びそうになりました。勘違いするほどこの親子は人情に厚くカッコいいってことなんですけど。

昔は親子で同じ名前を名乗ることが多かったから大変です。


いつもは松永や、他の火消のカッコいいセリフに泣かされそうになるのですが、今回は長谷川平蔵に全てもっていかれた感じがしました。電車の中で読んだのでこらえましたが、家で読んでいたら号泣していたと思います。

こんなところで、こんな目に合うとは・・・

武士らしくかっこよかったですけど、悔しくてたまりませんでした。

息子が立派に継いでくれるわけですからまだ救われますけど。


そして、今回ほとんど登場しなかった奥様ですが、松永の落ち込むタイミングで的確な手紙を送ってきて、その内容は励ましつつ愚痴りつつ、本当に素敵でした。手紙だけでも私の心を鷲掴みしてくれました。

次はどんな活躍をみせてくれるか楽しみです。


<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」
「夜哭鳥」
「九紋龍」


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2022年08月25日

霜月りつ「神様の子守はじめました。4」

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 霜月りつ 著
 「神様の子守はじめました。4」
 (コスミック文庫α)


朱雀の化身・朱陽は明るく物怖じしない性格でご町内のアイドル的存在。朱陽といつも張り合ってケンカしてしまうのは青竜の化身の蒼矢。白虎の化身・白花は大人しくて恥ずかしがりやで、隙あらば寝てしまうのは玄武の化身・玄輝だ。普通の人間なのに四獣神の子供を預かることになってしまった羽鳥梓は毎日、神様の子育てに追われている。個性もでてきて自我が芽生え始めた子供たちにいろいろな体験をさせようとするが、行く先々でトラブル発生で―!?−裏表紙より−


相変わらず四神の子どもたちに振り回されている梓。でもどんどんかわいくまっすぐ育っていていい感じです。

詳しい内容は忘れるくらい軽い感じ。

このシリーズは読み終わったらすぐ感想書かないとだめだな・・。


<神様の子守シリーズ>
「神様の子守はじめました。1」
「神様の子守はじめました。2」
「神様の子守はじめました。3」


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タグ:霜月りつ

2022年08月17日

矢崎存美「ぶたぶたのお引っ越し」

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 矢崎存美 著
 「ぶたぶたのお引っ越し」
 (光文社文庫)


リタイア後、田舎に移住したいという夫と考えが合わず悩む成美の前に、移住のアドバイザーとして登場したのは―(「あこがれの人」)。家賃の安い「告知事項あり物件」に引っ越すことになった詠斗は、挨拶に訪れた隣の部屋で、衝撃の出会いを果たす―(「告知事項あり」)。お引越しによる、出会いと別れ。その節目に、不思議なぬいぐるみと出会ったら。心震える三篇を収録。−裏表紙より−


短編ですが珍しく1話ずつが長めでした。

題名から想像していたのは、ぶたぶたさんが引っ越し業者の人で、意外と力持ちで大きな段ボールを運んでいるとか、引っ越しの見積もりにやって来て驚く依頼人とか、引っ越した後でアンケート的な物を取りに来てついでに悩み相談するとか、とにかく引っ越し業者なんだろうと思ってしまったのですが、そういうことではありませんでした。

なんかちょっと残念な気もしますが、これはこれで面白かったです。


あこがれの人

仕事を辞めた後に田舎に移住したいという夫と、それに反対する妻の話です。

田舎に住むのも良さそうとは思っているのですが、夫の動機が納得できず悩んでいます。そんなとき相談したのが移住アドバイザーとして登場したぶたぶたさん。

悩みを打ち明けて気持ちが軽くなって前向きに考えられるようになりました。

田舎で育った私としては、歳を取ってから田舎に行きたいという気持ちが全く理解できません。その方が健康的なのかもしれませんが、暮らすのは大変そうです。街中の方が便利そうと思ってしまいます。

でもぶたぶたさんが近所にいるなら考えてしまうな〜。


告知事項あり

「告知事項アリ物件」に引っ越すことになった人の話です。

この話ではぶたぶたさんは隣人でした。その物件に住むのも勇気がいりますが、隣人も大変そう、と思って読んでいたらもっと深い苦悩がありました。

優しくてカッコいいぶたぶたさんが読めますよ。


友達になりたい

この話が一番のお気に入りです。ぶたぶたさんのお子さんが登場します。しかも、同級生から見た様子も読めて面白かったです。

とはいえ、お子さんがメインではなく、やはりぶたぶたさんがメインになっていて、彼に近づきたい、仲良くなりたいと願う人たちのやりとりが描かれています。

意外な共通点があったりして、最後まで楽しめる内容でした。



引っ越しって、別れの悲しみもありますが、出会いもあってドキドキするものです。そんな時にぶたぶたさんと出会えたら、きっと楽しめるはず?


<ぶたぶたさんシリーズ>
「ぶたぶた」
「刑事ぶたぶた」
「ぶたぶたの休日」
「夏の日のぶたぶた」
「クリスマスのぶたぶた」
「ぶたぶた日記」
「ぶたぶたの食卓」
「ぶたぶたのいる場所」
「ぶたぶたと秘密のアップルパイ」
「訪問者ぶたぶた」
「再びのぶたぶた」
「キッチンぶたぶた」
「ぶたぶたさん」
「ぶたぶたは見た」
「ぶたぶたカフェ」
「ぶたぶた図書館」
「ぶたぶた洋菓子店」
「ぶたぶたのお医者さん」
「ぶたぶたの本屋さん」
「ぶたぶたのおかわり!」
「学校のぶたぶた」
「ぶたぶたの甘いもの」
「ドクターぶたぶた」
「ぶたぶたの花束」
「居酒屋ぶたぶた」
「海の家のぶたぶた」
「ぶたぶたラジオ」
「森のシェフぶたぶた」
「編集者ぶたぶた」
「ぶたぶたのティータイム」
「ぶたぶたのシェアハウス」
「出張料理人ぶたぶた」
「名探偵ぶたぶた」
「ランチタイムのぶたぶた」


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2022年08月09日

今野敏「機捜235」

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 今野敏 著
 「機捜235」
 (光文社文庫)


渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸。公務中に負傷した同僚にかわり、高丸の相棒として新たに着任したのは、白髪頭で風采のあがらない定年間際の男・縞長だった。しょぼくれた相棒に心の中で意気消沈する高丸だが、実は、そんな縞長が以前にいた部署は捜査共助課見当たり捜査班、独特の能力と実力を求められる専門家集団だった・・・。−裏表紙より−


また新しいシリーズに手を出してしまった・・・。しかも面白かったから追わないといけない!

たくさんのシリーズを読んでいる作家さんですが、同じ警察小説でもそれぞれ雰囲気が違っていて混乱せずに読めるのがすごいです。

「安積班シリーズ」「隠蔽捜査」「樋口顕シリーズ」「トカゲシリーズ」「STシリーズ」などなど、警察小説だけでもまだあったと思います。これでも控えめにしているつもりなんですけど、また増えてしまいました。


こちらの作品は、題名の通り機動捜査隊の話です。機動捜査隊といえば、現場に一番に駆けつけて初動捜査を行う部署。現場を見て保存し、近所の聞き込みを行って、捜査一課などの専門部署がやって来たら報告して終了。

交番のおまわりさんとの違いがよくわかりませんが、受け持ちの範囲が広くて、些細な事件とか揉め事には出動しない感じが違うと認識しています。


そんな機動捜査隊に所属する高丸が主人公となり話は進んでいきます。年齢の近い相棒とずっと行動してきたのですが、相棒がけがをしたため、別の人と組むことになります。やって来たのは定年間際の縞長という男。

機動捜査隊は犯人と遭遇することも多いため、体力のある若手が担当することがほとんど。それなのに中年男性がやって来たので驚きます。まだまだ手柄を上げて出世したいと思っている高丸にとって面倒な相手です。


いざ一緒に巡回に出ると意外な才能をもっていることが判明します。縞長が以前いたのが捜査共助課見当たり捜査班という部署だったのです。その部署は、指名手配を受けているたくさんの容疑者の写真や年齢などを頭にインプットしておき、いつでも見たら気づくように訓練されています。

警察車両を流している間に何人かの指名手配犯に気づく縞長。それを聞いて半信半疑ながら声を掛けて逮捕する高丸。始めは2人の間に壁がありましたが、お互いに能力を認め合い、最後の方には良い関係が出来上がっていました。


今までの警察小説とはまた違うタイプの小説で、これはまた今後が楽しみになりました。

長く続くシリーズになってもらいたいものです。追いかけるのが大変ですけど・・。


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2022年08月04日

伊坂幸太郎「クジラアタマの王様」

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 伊坂幸太郎 著
 「クジラアタマの王様」
 (新潮文庫)


記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている?製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり・・。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。−裏表紙より−


お気に入りの作家さん。しかも気になる題名で読んでみたくて「本が好き!夏に読みたい文庫プレゼントキャンペーン」に応募したところ当選しました! こういうくじ的な物って大体外れるんですけど、当選して嬉しかったです。


本を捲ったらいきなり漫画が描いてあってびっくりしました。2〜3ページでセリフはない漫画。中世ヨーロッパの戦士っぽい格好の人たちがいて、なぜか「ハシビロコウ」も描かれています。どういう意味だろう?と思うままに本編が始まります。

主人公・岸は製菓会社の広報部で働いています。広報部でもクレーム対応が主な仕事というストレスが溜まりそうな日常を過ごしています。社内ではきっと流行らないだろうと予想されていたあるお菓子が、あるアイドルが「美味しい」とテレビで言ったことで爆発的な人気を出し、品薄状態になっていました。

そのお菓子に「異物が入っていた」とクレームが来ます。初めの対応が悪かったせいで大ごとになっていき、対応がうまいとされている岸が対応することに。そこから会社上層部の古い体質や時代に合わない発言などのせいで発生するトラブルにどんどん巻き込まれていきます。


連絡短編のように1話ずつ完結はするのですが、その度に漫画が挟まります。その漫画の意味は、ある議員の登場によってわかってきます。その議員と、お菓子の宣伝をしてくれたアイドル、そして岸の3人が夢の中で出会っているというのです。そこにハシビロコウが出てきます。

所々で出てくるハシビロコウ。実は個人的に最近ハシビロコウに興味があって、とある花鳥園にいる1羽のハシビロコウの動画を見るようになっています。普段、鳥類は苦手で映像を見るのも嫌なのですが、なぜか彼女のことはかわいいと思えたんです。

動かない鳥と言われるハシビロコウですが、彼女はまだ幼いそうでよく動いています。好きな飼育員さんに対してお辞儀をする様子がかわいくて見ています。

そんなタイミングで出て来たハシビロコウ、運命の出会いをした気分でした。

この話の中でのハシビロコウは謎の存在で、その役割は他の鳥ではしっくりしない気がします。

何より驚いたのは題名。この題名が気になって読みたくなったわけですが、これもハシビロコウのことでした。動画を何度も見ているにも関わらず知らなかったのでびっくりしました。ラテン語での学名が「クジラアタマの王様」というそうです。何でこんな名前が付いたんだろう?謎です。嘴が広いからハシビロコウというのはなるほど、と思えますけど「クジラアタマ」って何?


作品の感想というよりハシビロコウの話になってしまいましたが、作品自体はこの作家さんらしく、不思議な世界観でどうやって収めていくのか不安に思いながら読んでいて気づいたらきれいに回収されている感じで、「あ〜面白かった」と本を閉じる状態になります。

いつもよりもハラハラ感が増していて最後は爽快でした。不思議な世界観に浸りたい方、ぜひどうぞ。


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posted by DONA at 16:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:伊坂幸太郎

2022年08月01日

7月のまとめ

六月の雪 (文春文庫)六月の雪 (文春文庫)
分厚い本なので時間がかかってしまいました。内容もかなり濃くて重かったです。ただ、読みやすい文章なのが救いでしたけど、最後まで晴れ晴れとはならなかったです。台湾の歴史を知れば知るほどつらい気持ちになりますし、涙があふれる場面も多かったです。過酷な人生を歩んできて、でも人に親切で、でも自分の感情は出さない、不思議な国民性です。もっと知りたくなりました。
読了日:07月14日 著者:乃南 アサ


偽のプリンセスと糸車の呪い (創元推理文庫 Fス 5-14)偽のプリンセスと糸車の呪い (創元推理文庫)
主人公の女子高生が強すぎてちょっと違和感。でも全体的にファンタジー感が濃くて面白かった。もっと魔法が出てくると好みになるんですが。続きもありそうなので追いかけていきたいです。
読了日:07月24日 著者:シャンナ・スウェンドソン


クジラアタマの王様 (新潮文庫)クジラアタマの王様 (新潮文庫)
題名が気になって読んでみました。この作家さんらしい世界観で、今の現実世界にもぴったりな雰囲気の話でした。去年くらいからこっそり気になっていたハシビロコウの登場に驚きました。題名はそういう意味だったのか・・。
読了日:07月26日 著者:伊坂 幸太郎




自分での驚きの3冊で終了。

1冊が時間かかったのもありますし、残り2冊も普通より時間がかかったかな?
あまりの暑さに何もやる気になりませんしね・・・。時間があってもぼんやり過ごすことが多くなってしまいました。

posted by DONA at 14:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ