2022年04月28日

高田郁「あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇」

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 高田郁 著
 「あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇」
 (ハルキ文庫)


浅草田原町に「五鈴屋江戸本店」を開いて十年。藍染め浴衣地でその名を江戸中に知られる五鈴屋ではあるが、再び呉服も扱えるようになりたい、というのが主従の願いであった。仲間の協力を得て道筋が見えてきたものの、決して容易くはない。因縁の相手、幕府、そして思いがけない現象。しかし、帆を上げて大海を目指す、という固い決心のもと、幸と奉公人、そして仲間たちは、知恵を絞って様々な困難を乗り越えて行く。源流から始まった商いの流れに乗り、いよいよ出帆の刻を迎えるシリーズ第十二弾!!−裏表紙より−


いよいよ呉服が扱えるようになる!?とわくわくしながら読み始めましたが、やはりそう簡単にはいきません。

今もそうでしょうけど、昔は商売をするのが大変でした。お上からの許可が無いと扱えない商品がありますし、値段設定もありますし、仲間との兼ね合いやライバルの仲間との競合もあります。

袖の下を渡すのも暗黙のルールになっていますし。でも五鈴屋を始め仲間たいtもそこまで裕福なわけではないので、その工面にも苦労させられます。額面通り支払うべきなのか、何か方法は無いか?をさぐる幸。

そういう時に頼りになるのは元旦那さん。彼とのやりとり、そして仲間たちの協力でやっと後半になって呉服の商売が始まります。


呉服を扱うことになったら、今まで来てくれていた客の足が遠のくのではないか?という不安や、また新たな問題も出てきました。

商売をするというのは、自分の代で終わって良いというのではなく、代々伝えていくものでもあって、後継者の話もチラチラと出てきています。幸が望んでいる人が継いでくれると良いのですが。


そして、呉服を扱っても今までの客も来てくれて、更に新しい客も掴むという難問にどう立ち向かうのか?も楽しみですし、最後に出てきた問題もどうなっていくのか楽しみです。

妹・結の店との直接対決にもなりそうで、どうやって打ち負かすのか、爽快な結末が見たいと思います。


<あきない世傳金と銀>
「源流篇」
「早瀬篇」
「奔流篇」
「貫流篇」
「転流篇」
「本流篇」
「碧流篇」
「瀑布篇」
「淵泉篇」
「合流篇」
「風待ち篇」


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posted by DONA at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:高田郁

2022年04月20日

鴨崎暖炉「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」

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 鴨崎暖炉 著
 「密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック」
 (宝島社文庫)


「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」との判例により、現場が密室である限りは無罪であることが担保された日本では、密室殺人事件が激増していた。そんななか著名なミステリー作家が遺したホテル「雪白館」で、密室殺人が起きた。館に通じる唯一の橋が落とされ、孤立した状況で凶行が繰り返される。現場はいずれも密室、死体の傍らには奇妙なトランプが残されていて―。−裏表紙より−


「読書メーター」で献本申し込みして当選しました。


「密室の不解証明は、現場の不在証明と同等の価値がある」という判決が出されて以降、殺人事件といえば密室殺人となるほど流行っていた時代の話です。もちろん、現実にはそんな時代はありませんけど。

この判例はつまり、密室殺人事件で密室トリックが解明出来なければ、容疑者が密室内以外どこにいようともアリバイが証明できなくても容疑が晴れるということです。

だから、殺人事件を起こそうと思ったら、変にアリバイ工作するよりも、密室を作ってしまった方が確実だということになり、密室殺人が多発していました。

でも素人が簡単に密室を作れるはずもなく、密室つくりの達人みたいな人が登場します。まあそれは自然な流れですけどね。



そんな時代に、とあるミステリー作家が遺したホテルで密室連続殺人が起きます。そのホテルは作家が生きている頃に密室を作ったことがあり、いまだにそのトリックが解明されていないため、密室事件に興味を持っているマニアから人気になっていました。

ミステリーファンの中でも密室殺人のマニアでもある人たちが泊っている中で起きる連続殺人事件。ホテルに通じる唯一の橋も落とされてしまい、部屋だけではなくホテル自体も大きな意味での密室状態でした。犯人は必ず宿泊客の中にいるわけで、誰が犯人なのか、密室のトリックは解明できるのか、動機はなんなのか、など謎が次々と。


殺人が起きる度に、新たな密室が作られるので、密室殺人が好きな方にはたまらない作品だと思います。私も嫌いではないのですが、想像力が乏しいせいもあって、密室の様子がいまいち頭で再現できないのがもどかしかったです。

簡単な図はついているのですがそれだけでは理解出来ないこともたくさんありました。殺人のドラマはあまり気持ち良い物ではないですが、これはぜひ映像化されたものを見てみたいです。

トリックを暴く人の解説と共に密室の様子を映像でしっかり見せてほしいです。そうしないと「なるほど!」と思えません。

しかし、これだけ何個も密室が出てくると、作家さんの頭ものぞいてみたくなりますね。どういう構造をしていたらここまで次々思いつくんでしょう。変なことに興味がいってしまいました。


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タグ:鴨崎暖炉

2022年04月14日

柚月裕子「検事の信義」

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 柚月裕子 著
 「検事の信義」
 (角川文庫)


任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった・・・。(「信義を守る」)−裏表紙より−


「裁きを望む」「恨みを刻む」「正義を質す」「信義を守る」の4編収録されています。

映像化されている作品もあって読んだことがあるような錯覚を覚えてしまいました。映像化されたものを先に見ていると、その俳優さんが頭に出てきてしまいますが、その場の雰囲気や街並みなどは思い浮かべやすくて良いですね。



「裁きを望む」
これはドラマで見ました。でも結末は忘れていたので楽しめて良かったです。ある資産家の隠し子が親子鑑定してもらうために画策する話です。普通に親子鑑定してほしいと言ってもしてもらえないので二重三重に伏線を張って裁判所も巻き込みながら思いを遂げていきます。そこまでしなくても・・と思ってしまいますが、何だか切ない気持ちになりました。



「恨みを刻む」
これもドラマで見ました。アリバイの矛盾点からどんどん事件が思わぬ方向に転がっていきます。最後がスッキリとはいきませんが、佐方は良い上司に恵まれていて羨ましく思いました。



「正義を質す」
これも結末がスッキリしない感じでした。色々な立場の色々な人たちの思惑が絡み合って、検察の世界も政治の世界に似ているように見えました。



「信義を守る」
これも何とも言えない読後感でした。悲しくて切なくて、でもそれだけでは語れない重い問題。母親のことを自分で介護したくて、でも精神的にも体力的にも大変で、でも他人に任せたくなくて・・・。本当に簡単には言えない問題です。自分にもいつかは降りかかってくる問題。でもまだどこか他人事な感じがあって、それではいけないと思いつつどうにもできない。

国の制度で何とかしてほしいですが、それだけではどうにもできないであろうこともわかりますし、親には長生きしてもらいたいけど介護は大変で、どうすれば助けられるのか、助けてもらえるのか、今から色々調べておくべきなのでしょうね。


今回の佐方も自分の信念を貫きつつ、信じられる上司と頼りになる事務官に支えられながら検事の仕事をまっとうしていました。すっきり出来ない話も多かったですが、やはりこのシリーズは面白いです。


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タグ:柚月裕子

2022年04月01日

3月のまとめ

定年就活 働きものがゆく (角川文庫)定年就活 働きものがゆく (角川文庫)
65歳まで働ける会社で充実した日々を送っていたのについ勢いで60歳にして退職してしまった妙子。まだまだ働ける!と就活を開始するその精神力と行動力には感心しました。確かに60歳で退職してしまったら何したら良いか悩みそうです。周りの人に影響されながらも結局は望んだ形で働ける妙子さんがちょっとうらやましくもなりました。
読了日:03月03日 著者:堀川 アサコ


検事の信義 (角川文庫)検事の信義 (角川文庫)
堅物の佐方らしい話の数々。罪をまっとうに裁くことに重きをおいて検事の仕事を進める様子は背筋が伸びる感じでした。もっと肩の力を抜いたら良いのに、という仕事ではないので大変ですね。そんな佐方の唯一のストレス発散がたばこというのがまた切ない。
読了日:03月07日 著者:柚月裕子


【2022年・第20回「このミステリーがすごい! 大賞」文庫グランプリ受賞作】密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
献本当選したので読みました。ありがとうございます。題名の通り、密室殺人のオンパレードでした。密室を作る方法って色々あるんですね・・と変な感心をしてしまいました。ただ、時々図解があるのですがそれだけでは足りない複雑さで頭に思い描けない自分の理解力の無さが悲しかったです。映像で見たい気がしました。謎解きをしているセリフと同時に仕掛けが見たいです。
読了日:03月16日 著者:鴨崎 暖炉


あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇 (ハルキ文庫 た 19-27 時代小説文庫)あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇 (ハルキ文庫 時代小説文庫)
いよいよ大勝負に出ていけそうな状態になったかと思えばまた難問が。菊栄の店も良い方向性が見えてきましたし、どちらも商売がうまくいくようでホッとしました。これからも様々な妨害に負けずにお客にとって買い物しやすい店を続けてくれるでしょう。ますます楽しみです。
読了日:03月22日 著者:高田 郁


雲雀坂の魔法使い (実業之日本社文庫)雲雀坂の魔法使い (実業之日本社文庫)
1話目を読んだ時は失敗した?と思ったのですが2話目からは面白くなりました。もっと魔法を使うのかと思ったらかなり控えめでした。でもそれがこの作品にはちょうど良かったかもしれません。時々ほろりとさせられる話が多くて読んで良かったです。
読了日:03月26日 著者:沖田 円


仙文閣の稀書目録 (角川文庫)仙文閣の稀書目録 (角川文庫)
軽くサラッと読めますが泣きそうになる場面があり面白く読めました。裏切者は予想通りの人でしたけど。ビブリアシリーズの時は本にそこまで思い入れる気持ちがわからないと思いましたが今回は命がけで守りたい気持ちが何となくわかりました。彼女の成長を見続けられるのかな?続きが読みたいです。
読了日:03月31日 著者:三川 みり



全部で6冊。ページ数の少ない物が多かったので少し増えました。

特に印象に残ったのは「あきない世傳金と銀<十二>」「検事の信義」です。

posted by DONA at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ