2022年03月29日

シャンナ・スウェンドソン「魔法使いの失われた週末」

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 シャンナ・スウェンドソン 著
  今泉敦子 訳
 「魔法使いの失われた週末」
 (創元推理文庫)


(株)マジック・スペル&イリュージョンは、ニューヨークの魔法界で魔術を開発販売する会社。CEOはなんと伝説の大魔法使いマーリンだ。シャイで赤面症の研究開発部理論魔術課の責任者オーウェンと養母、素直に愛情を表現できない二人の心の交流を描いた表題作ほか、本国でも未発表な特別な短編一編を含む全四編を収録。日本オリジナル編集で贈る、大ヒットシリーズ初の短編集。−裏表紙より−


「スペリング・テスト」「街を真っ赤に」「犯罪の魔法」「魔法使いの失われた週末」の4編収録されています。


4話のうち3話は本国で電子書籍などで発表されていたようですが、表題作のみ日本オリジナルだそうです。日本で短編集を出すに当たり、ページ数が少ないので何とか1話書いて欲しいとお願いしたら書いてくれたとか。なんて嬉しいことでしょう!ファンとしてはありがたいことです。

表題作は何で未発表なのか不思議なくらい良いお話でしたよ。残り3話はまだケイティが魔法界に携わる前の話なのですが、この表題作だけは1作目の続きというか途中というかの話で、ファンとしては懐かしい気持ちになりましたし、これを読んだらまた1作目から読み返したくなります。

オーウェンと養母の話で、2人のお互いを想っているのにそれをうまく見せることが出来ない関係性がもどかしくも暖かい気持ちになれる内容です。ファンはぜひ読むべき話です。



「スペリング・テスト」は、オーウェンとロッドの学生時代の話です。昔から野心家だったロッドと、人にあまり関心がないオーウェン、2人とも昔からこんな感じだったんだとニヤニヤしてしまいました。ちょっとハラハラする内容ではありますが、すっきり出来る結末です。


「街を真っ赤に」はガーゴイル・サムの活躍が描かれています。彼らの任務にスポットが当たり、元々彼らのファンだった私にはたまらない話でした。


「犯罪の魔法」では、オーウェンとケイティの出会いが描かれています。本編はケイティ目線で描かれているので、オーウェンがどういう気持ちでケイティと出会ったのかはこれを読まないとわかりません。出会うべくして出会った2人なんだと改めて知ることが出来て、ファンとしては笑いが止まらない話です。これも読んだら1作目に戻りたくなります!


シリーズが終わってもう彼らに会えないのかと寂しくなっていたところに新たな短編集。嬉しくてたまりません。ほぼ一気読み状態でした。またいつかこんな風に新作を出してもらえたら嬉しいです。

それまでの間はまた1作目からちょっとずつ読み返そうかな?と画策中。


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2022年03月24日

西條奈加「雨上がり月霞む夜」

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 西條奈加 著
 「雨上がり月霞む夜」
 (中公文庫)


がさつだが情に篤い秋成と、死者や妖しと交流する力を持つ雨月。幼馴染の二人は人間の言葉を話す兎「遊戯」との出会いをきっかけに、様々な変事に巻き込まれることに―。掛け軸から飛び出す金鯉、歳を取らない美女、罪の果てに鬼にまでなった男まで。江戸怪奇譚の傑作『雨月物語』をモチーフに綴る、切なく幻想的な連作短編集。−裏表紙より−


「雨月物語」がモチーフになっている物語です。

と書きながら、「雨月物語」を読んだことがないのでどの程度関係があるのかわかりませんけど。「雨月物語」を書いた秋成が登場します。彼が「雨月物語」を書くまでの話という感じです。

秋成はあまり細かいことは気にしないタイプの人で、だからこそちょっと不思議な雰囲気を持つ雨月と仲良くいられるようです。雨月が出会った、人間の言葉を話す兎と3人(?)が巻き込まれて行く出来事が描かれています。

その出来事というのが普通のことではなく、霊や妖などが出てきて、悲しいことも多いのですが、悲しい中にもゾッとするようなことがあるので、怖いのが苦手な私としてはあまり想像せずに読まないと辛い部分もありました。


後半は秋成の幼馴染としてずっとそばにいた雨月のことが明かされて行きます。読者は結構早めに雨月は人間では無さそうだと気づくと思うのですが、一番そばにいるからこそ秋成は気づいていませんでした。

だからこそ“がさつ”と呼ばれてしまうのでしょうけど。


雨月は人間ではないだろうということには気づいていましたが、その正体は意外なものでした。こんな結末だとは。

私が想像したように誰かの霊だった方がスッキリ出来たと思うのですが、それではこの物語はうまく収まらなかったのかもしれません。人間が内に秘めている感情や欲望がテーマになっているわけですから。

でもやっぱり彼らが共に過ごしてきた年月を思うと悲しい気持ちになってしまいます。


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2022年03月23日

買った本

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 シャンナ・スウェンドソン 著
  今泉敦子 訳
 「魔法使いの失われた週末」
 (創元推理文庫)


最終巻が出てしまったのでもう読めないかと思っていたシリーズ。新作が出て嬉しすぎでした。


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 西條奈加 著
 「雨上がり月霞む夜」
 (中公文庫)


とりあえず新作が出たら買う作家さんです。不思議な話でした。


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 柚月裕子 著
 「検事の信義」
 (角川文庫)


大好きなシリーズの新作。やっぱり面白い。


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 高田郁 著
 「あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇」
 (ハルキ文庫)


こちらも大好きなシリーズです。読み始めたら一気読みなので、次が出るまで待ち遠しいです。

2022年03月15日

近藤史恵「ガーデン」

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 近藤史恵 著
 「ガーデン」
 (創元推理文庫)


小函を抱えて今泉探偵事務所を訪れた奥田真波は「火夜が帰ってこないんです」と訴える。燃える火に夜、人を魅惑せずにはいない謎めいた娘だ。函の中身を見て只事ではないと諒解した今泉は、助手山本公彦と共に火夜の行方を追う。やがて探偵は、死を招き寄せるあやかしの庭へ・・。周到な伏線と丹念に組み立てられた物語世界、目の離せない場面展開がこたえられない傑作ミステリ。−裏表紙より−


「ねむりねずみ」など、歌舞伎の世界での事件を調査する今泉探偵が出てくる物語です。

歌舞伎の話より前なので、探偵としてはまだ駆け出しの今泉の様子が見られます。助手の意外な秘密もあったりして、シリーズのファンの方はこれも読んだ方がよさそうです。


ただ、本作の内容は、私は苦手なタイプでした。始めから終わりまでただひたすらに暗い・・。そして、登場人物の誰にも共感できるところがない。何だか海外ドラマのようです。しかも、治安が悪い下町のような場所での話という感じです。

出てくる少女たちも、まだ若いはずなのに妙に大人びていて、ドラッグでもやっていそうな感じ。実際一人はやっていたようですけど。

本来は犯罪から遠い存在のはずの彼女たちの周りに、普通に起こる殺人事件。殺人事件が起きるのに警察は出てこないという異様な状況。少しは葛藤したようですけどあっさりと隠蔽する人たち。

どれもこれもついて行けませんでした。


ある意味、かけ離れていて感情移入しない方が読みやすい気はしますけど。


そして、相変わらず今泉は自分一人で何かに気づいて何かにつまずいて何かに悩んで、このまま事件を忘れようと一度は考えて、結局は全てを暴いてしまいます。

暴いたからといって救われないんですけどね。

死ななくても良い人もたくさん死んで、結局何が言いたかったんだろう?と最後まで理解出来ずでした。

これは、彼女の人生を憂いておけば良いのか?よくわかりませんでした。


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2022年03月10日

中島久枝「湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 三日月の巻」

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 中島久枝 著
 「湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ 三日月の巻」
 (ポプラ社文庫)※電子書籍


如月庵は上野広小路から湯島天神に至る坂の途中にある、知る人ぞ知る小さな宿だが、もてなしは最高。気働きのある部屋係がいて、板前の料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えてしまうと噂だ……。
そんな如月庵の離れに、謎の人物が逗留しているらしい。離れは女中頭の桔梗がつきっきりで世話をしているが、どうやら桔梗の過去にも関わりがあるようで……。
大好評お江戸人情シリーズ第2弾!
−出版社HPより−


久しぶりに読んだので、1作目のことはほとんど忘れていました。それでも特に困ることなく読めて良かったです。

ちょっと「お勝手のあん」シリーズと混同しそうではありますが。


如月庵は小さな宿。そこで繰り広げられるお客と部屋係との物語が描かれています。部屋係としてはまだまだ新米の梅乃は、1作目と同じようにお客さまに対してやりすぎなくらい世話を焼きます。

普通そこまでやるか?というか、もし自分が客として泊っていたらそこまでやられたら逆に嫌になりそうと思うくらい。


お客さまの家族の問題にまで首を突っ込んだり、お客さまの代わりに料理屋に行ったり、お客さまの代わりに友人を説得しに行ったり。
さすがにそこまでやるか?と言われてしまうこともあるのですが、最終的にはみんな感謝するということはこれで良いのかもしれませんが、本当に心配になります。

宿に泊まっただけの人にそこまでするのが「お・も・て・な・し」だとすれば、働けないなとつくづく思います。


今回は女中頭の過去にも少し触れていますし、謎めいたお客さまもいて少し盛り上がる所もあり、1作目よりもサクサク読めました。

まだ続くようなので、また機会があれば読むつもりです。

<如月庵シリーズ>
「お宿如月庵へようこそ」


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タグ:中島久枝

2022年03月04日

堀川アサコ「定年就活 働きものがゆく」

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 堀川アサコ 著
 「定年就活 働きものがゆく」
 (角川文庫)


60歳の妙子は定年後も継続雇用の話を受けるつもりだったが、後輩女子たちの揶揄と同年の課長の栄転話に頭にきて、意地で会社を辞めてしまう。夫とはすでに死別、娘は結婚していて、一人暮らしに暇を持て余した妙子は就活を始めるが、どこもハラスメントな会社ばかり。しかも娘夫婦の15歳の養女・瑠希が転がり込んできて―。60代はまだまだ若い!第二の仕事や生き甲斐はどうやって探す?「定年」「就活」のサバイバル小説。−裏表紙より−


初めましての作家さんです。

定年就活という言葉に興味をもち「本が好き」で献本申し込みしました。

定年なんてまだまだ先だと思っていたのですが意外と近くなってきた・・とちょっと焦りのようなものを感じているこの頃。確かに後〇年で退職と言われてもきっと時間を持て余すだろうと思います。

インドア派で行動力も無い私でさえそう思うのですから、バイタリティに溢れる妙子はどう考えても暇になってしまいます。


本当は65歳まで働くつもりだったのに、売り言葉に買い言葉のような状態でつい辞める宣言をしてしまった妙子は、再就職するために就活を始めます。

何も再就職しなくても趣味を始めれば良いのに、とも思いますが、世間の人たちが働いている時間にのんびりするのは何だか申し訳ない、気が引けるというのです。この気持ちよくわかります。普段、日祝以外仕事しているのに、たまにお盆休みなんかで平日にぶらぶらしていると何だか肩身が狭いような気がしてしまいます。たまの休みなんだから堂々とすれば良いのですけど何となく・・。

そういう人は再就職するのが充実した毎日を送るために一番良いのでしょうね。妙子はあくまでも「正社員」にこだわって仕事を探しています。そこも素晴らしい精神力だと感心します。

いくつかの会社に面接に行くのですが、なかなか良い職場に巡り会えません。始めに行った会社は読んでいてゾッとさせられました。ここで働いている人たちってどういう神経なんだろう?これで良いと思っているのか?と色々疑問がわきました。実際にこんな会社あるのか?あったら怖すぎます。


就活を始めた妙子の元にやって来たのは、孫の瑠希。孫とは言っても娘夫婦が養子縁組した子どもなので、妙子にとって血のつながりはありません。それでも妙に気が合って、何度も「私に似ている」とか「亡くなった夫に似ている」とかの言葉が出てきます。始めこそ気を使っていたのですが、すぐに打ち解けて本当の祖母と孫のようになれるのも素敵です。


妙子は娘のことを「暗い」と言い、結構辛辣な評価をしているのですが、読んでいるとそこまで言わなくても・・という気持ちになりました。確かにちょっとネガティブではありますけど、養女に迎えた娘のことを大事に考えていて、素敵な母親だと思います。初めて親になったというのにしっかり親子関係が出来ていてすごいと思いますけどね。


妙子の就活は身内はもちろん、親友や親戚も巻き込みながら進んでいきます。最終的にはどんな場所で働くのか?は読んでみてください。この先もきっと定年まで、いや身体が動かなくなるまで妙子はここでバリバリ働いていくでしょう。

娘や孫ともケンカしながら、文句を言い合いながら楽しく過ごしていくに違いありません。

私もこんなバイタリティ溢れる60歳になりたいものですが、難しそう。私なりにそれなりに充実した毎日が過ごせたらそれで良いかな?と高望みは止めて、とりあえず定年までの〇年を過ごしていくことにします。


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タグ:堀川アサコ
posted by DONA at 15:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:その他

2022年03月01日

2月のまとめ

ガーデン (創元推理文庫)ガーデン (創元推理文庫)
「ねむりねずみ」などで登場する今泉探偵が初登場した作品です。彼も色々背負っていたんですね・・。それにしてもこういう重いタイプの話は読んでいて疲れます。ここまで他人を巻き込んで自分を傷つけて、ただのかまってちゃんかと思えたら楽だけどそうではなくて、夢を見てしまうほど色々考えさせられました。もっと気楽に生きられないものかな?
読了日:02月08日 著者:近藤 史恵


雨上がり月霞む夜 (中公文庫 さ 84-1)雨上がり月霞む夜 (中公文庫)
雨月物語がモチーフだそうですが、読んだことがないのでどうなのかわかりません。不思議な雰囲気の話ばかりで、時々怖い部分もありました。雨月の秘密はちょっと寂しかったです。誰かの霊の方が良かったような気がします。
読了日:02月17日 著者:西條 奈加


魔法使いの失われた週末: (株)魔法製作所 (創元推理文庫 F ス 5-13 (株)魔法製作所)魔法使いの失われた週末: (株)魔法製作所 (創元推理文庫)
学生時代のオーウェンやロッドの姿も見られましたし、ケイティと出会った時のオーウェンの気持ちも読めましたし、最高の時間が過ごせました。これはまた1作目から読み返さないといけない! またこんな感じで続編を出して欲しいと強く願います。
読了日:02月22日 著者:シャンナ・スウェンドソン


警官の道 (角川書店単行本)警官の道 (角川書店単行本)
短編なのが残念でもっと長く読みたい作品もありました。色んなタイプの警察官が出てきて面白かったです。タイムリーな内容も多かったです。
読了日:02月26日 著者:呉 勝浩,下村 敦史,長浦 京,中山 七里,葉真中 顕,深町 秋生,柚月裕子



全部で4冊でした。なかなか読み終わらない本があったので仕方ないですけど。

印象に残ったのは「魔法使いの失われた週末」です。

posted by DONA at 14:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ