
ポール・ギャリコ 著
矢川澄子 訳
「ほんものの魔法使」
(創元推理文庫)※電子書籍
魔術師――時に奇術師や手品師とも呼ばれる人々が住まう都市マジェイア。偉大なる魔術師の娘ながら周囲からできそこない扱いされていた少女ジェインの前に、ある日ふしぎな青年があらわれる。ものいう犬モプシーとはるばる山のむこうから旅してきたという彼は、魔術師ながら肩書きのない“ただのアダム”と名乗る。魔術師名匠組合への加入を希望するアダムのために、ジェインは助手となって審査会に臨むことに。そこで彼女が目の当たりにしたのは、種も仕掛けもない“ほんものの魔法”だった。矢川澄子の名訳で贈る、色褪せぬファンタジイの名作。解説=井辻朱美−出版社HPより−
久しぶりにファンタジーを読んでみました。幽霊や、ぶたのぬいぐるみがしゃべるようなファンタジーはよく読んでいますが、魔法使いが出てくるのは長い間読んでいませんので、「ほんものの」魔法使いという題名からして期待が高まります。
始まり方はとても静か。そして、暗い雰囲気でした。奇術師や手品師が住んでいるある都市に、ボロボロの姿をした青年・アダムがやって来ます。しゃべる犬・モプシーもつれていました。とはいえ、犬がしゃべっているのがわかるのは飼い主である青年だけのようです。その街に入るには門番に認められないといけません。基本的に手品師や奇術師しか入れません。
彼は魔術師だというので、とりあえず街に入ることが出来ました。ただ、この街にとどまるためには、組合に入らなければならず、そのためには審査会に合格する必要がありました。
さっそく審査会に出ることにするのですが、審査会に出るためには助手が必要ですし、審査会に出るための審査まであります。
助手として選んだのは、その街一番の魔術師の娘・ジェインでした。偉大な魔術師の娘なのに周りからは認められていなかった彼女は、父親から罰を受けて地下室に閉じ込められていました。それをモプシーが助けたことで仲良くなります。
アダムはどこか世間からずれている所があり、空気も読めなければ、周りに合わせることもしません。見ていてハラハラするような青年でした。犬のモプシーは色々なことに詳しくて、空気も読めるので、アダムにアドバイスをして彼がうまく周りとやっていけるようにしています。とはいえ、犬なので自己中心的な考え方をすることもありますが。
審査会に臨んだアダムはやはり色々な事件を巻き起こし、本人は何事もなかったように平然としていますが、周りは騒然となります。
ある意味仕方ないわけですよね、だって彼は「ほんものの」魔法使いなのですから。周りは種も仕掛けもあるマジックを見せる普通の人間たち。そこへほんものの魔法使いがやってきたら大変です。種も仕掛けも無く何でも見せられるのですから。
彼のことを排除しようとする動きや、味方に取り込んで魔術を教えてもらおうとする動きが出るのは当然です。
騒ぎに気づかないかのようなアダムは、ジェインとピクニックに出かけ、魔法とは何か?を語って聞かせます。その部分がこの物語のクライマックスなんでしょう。要約すると魔法というのは日常にあふれているということです。なるほど・・と思える内容ではありましたが、だから何?というか、まさかここがピークなの?という気持ちになってしまいました。
もっと魔法使いらしさとか、手品師たちとの駆け引きとか、ジェインがどんな成長を見せるのかとか色々読みたい所があったので、あっさり終わってしまったのが残念でした。
最後まで読んでもアダムがどんな人なのか、モプシーの秘密もわからず、消化不良のままでした。
期待していた内容と違ったのは残念でした。
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