2021年10月18日

柴田よしき「少女達がいた街」

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 柴田よしき 著
 「少女達がいた街」
 (角川文庫)



1975年、渋谷。ロックの熱狂が鳴り響く街に16歳のノンノはいた。親友チアキはバンドの道を突き進む。ノンノは自分に似た少女ナッキーと出会うが、それぞれの青春に見えない影が差す。不可解な出火事件。焼け落ちたノンノの家からは2つの焼死体と1人の記憶喪失の少女が・・。21年後。既に時効になったこの事件を追う刑事がいた。そこに秘められた意外な真実とは!? 2人の少女の謎を追い、青春と哀歓を描いた新感覚ミステリ。−裏表紙より−


好きな作家さんですが、こういう話は読みにくいな・・。

前半は、1975年が舞台になっています。私もまだ生まれてまもない頃です。当然覚えていませんし、しかも東京の話となるとどんな世界だったのかほとんどわかりません。

ロックがブームだったようです。16歳にして、渋谷という繁華街に出歩いて、喫茶店に入り浸るなんてなかなかの生活です。自分のことを思い出してみれば、16歳なんてまだまだ子どもだった気がしますけど。もちろん1人で繁華街をうろついたり、喫茶店に入るなんてありえませんでした。

ノンノという少女はとても大人びているように感じました。でも外見は幼く見えたようです。

ノンノが喫茶店で待ち合わせて仲良くおしゃべりしていたのは、チアキという少女。彼女もまた高校生でしたが、ノンノとは違う学校に通っていました。そして、バンド活動にはまっていて、いつもバンドの話をして盛り上がっていました。チアキと過ごす日常も気に入ってはいましたが、チアキが自分のことよりもバンドのことを大事にしていることが不満になっていきました。

高校生の頃って、友達にはいつも自分の方を見ていてもらいたかったものですよね。読んでいて何だか懐かしく、そして苦しくなりました。

そんな時に出会ったのがナッキーという少女。ノンノに似ている少女でした。でも、ナッキーの方が大人びて見えたので、ノンノは憧れに似た感情を抱いていきます。


こんな感じで女子高生たちの日常が描かれていく前半。彼女たちの生活ぶりは真面目な高校生とは違うかもしれませんが、抱えている悩みなどはみんなと同じで、きっと女性なら、高校時代を過ごしたことがある方なら、懐かしくなると思います。

ドラッグだったり、売春のような話も出て来てはいましたが、それは渋谷という街だからかな?とか、時代が違うしとかどこか遠い世界の話のように感じてサラッと読み飛ばしていました。

でも後で思い返すと、こういう部分こそが後半に結びついてくることだったんです。

私のように「女子高生はいつの時代も大変だね〜」なんてふわっと読んでいると後半の話の展開についていけなくなるので要注意です。


後半はいきなりミステリ色が強くなっていきます。

不審な火事、焼死体が2体、助け出された記憶喪失の少女、時効になったはずの事件を追う刑事・・・これぞミステリという物が次々と現れます。

記憶喪失になっている少女は、ノンノだと思われていました。彼女の家で起きた火事だったからです。でも彼女は記憶を無くしていて、本当にノンノなのかがわかりません。身内は全て亡くなっていましたし、ずっと彼女の家に来てくれていたお手伝いさんが彼女を「ノンノだ」と言い切ったことで、ノンノだということになったわけです。

でも、ナッキーというノンノによく似た少女がいたことがわかっているので、もしかしたら生き残ったのはナッキーではないか?とも疑えるわけです。

ここからは一つ証拠が見つかる度に、やっぱりノンノだった、いやナッキーだった、と二転三転していきます。そして、放火されたと思われる事件の犯人もわかっていませんし、謎が深まるばかりでした。

前半はこの話はどうやって盛り上がるつもりなんだろう?と疑問で読み進みにくかったのですが、後半は一気読み状態になりました。


古い作品で、内容も古い感じでしたが、後半は面白かったです。ただ再読したいか?というとしないかな。


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posted by DONA at 14:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:柴田よしき