2021年10月26日

今村翔吾「夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組」

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 今村翔吾 著
 「夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社)※電子書籍
 

「八咫烏(やたがらす)」の異名を取り、江戸一番の火消加賀鳶(かがとび)を率(ひき)いる大音勘九郎(おおとかんくろう)を非道な罠(わな)が襲う。身内を攫(さら)い、出動を妨害、被害の拡大を狙う何者かに標的にされたのだ。家族を諦(あきら)めようとする勘九郎に対し、「火喰鳥(ひくいどり)」松永源吾(まつながげんご)率いる羽州(うしゅう)「ぼろ鳶(とび)」組は、大音一家を救い、卑劣な敵を止めるため、果敢に出張るが……。業火(ごうか)を前に命を張った男たちの団結。手に汗握る傑作時代小説。−出版社HPより−


今回の事件は、かなり腹が立つ卑劣な物でした。動機も納得できませんし、あり得ない物。そんなことで放火するとか意味がわかりません。他に方法があると思うのに、悪い奴というのはほんと浅はかですね。浅はかだからこそ捕まるんですけど。


ぼろ鳶組と並んで人気の高い、加賀鳶組。その組頭である勘九郎も事件に巻き込まれてしまいます。その他の火消たちも次々と犠牲に。

火消といっても、武家が抱えている火消もあれば、町で町人が作っている火消もあります。ただ、その出動にはいろいろと手順があるそうで、その面倒臭いところを利用されて、今回の火付けは行われました。

出動を促す鐘を鳴らすのが誰が一番じゃないといけないとか、その鐘が鳴らされないと出動できないとか・・。

火をつけた悪者は、火事を広げて被害を大きくしたいので、鐘を鳴らすのを出来るだけ遅らせようとしました。そのために取った行動が腹が立つ! 火消本人を狙うのではなく、身内を攫って脅すというやり方!

しかもその動機がくだらない! ひたすら腹が立つ相手だったので、同情することも無く、ただただぼろ鳶組の人たちと他の火消たちを応援していれば良かったのである意味読みやすく、入り込みやすかったですけど。


今回もぼろ鳶組の人たちの活躍ぶりと、頭である源吾の潔さと、その奥様の嫌味の効いた言葉の数々にスカッとさせられました。いつも頼りなさげな新之助も大活躍で、彼のかっこよさが際立っていましたし、新たな仲間も増えてこれからも楽しみになりました。

<羽州ぼろ鳶組シリーズ>
「火喰鳥」


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2021年10月22日

ポール・ギャリコ「ほんものの魔法使」

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 ポール・ギャリコ 著
  矢川澄子 訳
 「ほんものの魔法使」
 (創元推理文庫)※電子書籍


魔術師――時に奇術師や手品師とも呼ばれる人々が住まう都市マジェイア。偉大なる魔術師の娘ながら周囲からできそこない扱いされていた少女ジェインの前に、ある日ふしぎな青年があらわれる。ものいう犬モプシーとはるばる山のむこうから旅してきたという彼は、魔術師ながら肩書きのない“ただのアダム”と名乗る。魔術師名匠組合への加入を希望するアダムのために、ジェインは助手となって審査会に臨むことに。そこで彼女が目の当たりにしたのは、種も仕掛けもない“ほんものの魔法”だった。矢川澄子の名訳で贈る、色褪せぬファンタジイの名作。解説=井辻朱美−出版社HPより−


久しぶりにファンタジーを読んでみました。幽霊や、ぶたのぬいぐるみがしゃべるようなファンタジーはよく読んでいますが、魔法使いが出てくるのは長い間読んでいませんので、「ほんものの」魔法使いという題名からして期待が高まります。


始まり方はとても静か。そして、暗い雰囲気でした。奇術師や手品師が住んでいるある都市に、ボロボロの姿をした青年・アダムがやって来ます。しゃべる犬・モプシーもつれていました。とはいえ、犬がしゃべっているのがわかるのは飼い主である青年だけのようです。その街に入るには門番に認められないといけません。基本的に手品師や奇術師しか入れません。

彼は魔術師だというので、とりあえず街に入ることが出来ました。ただ、この街にとどまるためには、組合に入らなければならず、そのためには審査会に合格する必要がありました。

さっそく審査会に出ることにするのですが、審査会に出るためには助手が必要ですし、審査会に出るための審査まであります。

助手として選んだのは、その街一番の魔術師の娘・ジェインでした。偉大な魔術師の娘なのに周りからは認められていなかった彼女は、父親から罰を受けて地下室に閉じ込められていました。それをモプシーが助けたことで仲良くなります。


アダムはどこか世間からずれている所があり、空気も読めなければ、周りに合わせることもしません。見ていてハラハラするような青年でした。犬のモプシーは色々なことに詳しくて、空気も読めるので、アダムにアドバイスをして彼がうまく周りとやっていけるようにしています。とはいえ、犬なので自己中心的な考え方をすることもありますが。

審査会に臨んだアダムはやはり色々な事件を巻き起こし、本人は何事もなかったように平然としていますが、周りは騒然となります。

ある意味仕方ないわけですよね、だって彼は「ほんものの」魔法使いなのですから。周りは種も仕掛けもあるマジックを見せる普通の人間たち。そこへほんものの魔法使いがやってきたら大変です。種も仕掛けも無く何でも見せられるのですから。

彼のことを排除しようとする動きや、味方に取り込んで魔術を教えてもらおうとする動きが出るのは当然です。


騒ぎに気づかないかのようなアダムは、ジェインとピクニックに出かけ、魔法とは何か?を語って聞かせます。その部分がこの物語のクライマックスなんでしょう。要約すると魔法というのは日常にあふれているということです。なるほど・・と思える内容ではありましたが、だから何?というか、まさかここがピークなの?という気持ちになってしまいました。


もっと魔法使いらしさとか、手品師たちとの駆け引きとか、ジェインがどんな成長を見せるのかとか色々読みたい所があったので、あっさり終わってしまったのが残念でした。

最後まで読んでもアダムがどんな人なのか、モプシーの秘密もわからず、消化不良のままでした。

期待していた内容と違ったのは残念でした。


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2021年10月18日

柴田よしき「少女達がいた街」

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 柴田よしき 著
 「少女達がいた街」
 (角川文庫)



1975年、渋谷。ロックの熱狂が鳴り響く街に16歳のノンノはいた。親友チアキはバンドの道を突き進む。ノンノは自分に似た少女ナッキーと出会うが、それぞれの青春に見えない影が差す。不可解な出火事件。焼け落ちたノンノの家からは2つの焼死体と1人の記憶喪失の少女が・・。21年後。既に時効になったこの事件を追う刑事がいた。そこに秘められた意外な真実とは!? 2人の少女の謎を追い、青春と哀歓を描いた新感覚ミステリ。−裏表紙より−


好きな作家さんですが、こういう話は読みにくいな・・。

前半は、1975年が舞台になっています。私もまだ生まれてまもない頃です。当然覚えていませんし、しかも東京の話となるとどんな世界だったのかほとんどわかりません。

ロックがブームだったようです。16歳にして、渋谷という繁華街に出歩いて、喫茶店に入り浸るなんてなかなかの生活です。自分のことを思い出してみれば、16歳なんてまだまだ子どもだった気がしますけど。もちろん1人で繁華街をうろついたり、喫茶店に入るなんてありえませんでした。

ノンノという少女はとても大人びているように感じました。でも外見は幼く見えたようです。

ノンノが喫茶店で待ち合わせて仲良くおしゃべりしていたのは、チアキという少女。彼女もまた高校生でしたが、ノンノとは違う学校に通っていました。そして、バンド活動にはまっていて、いつもバンドの話をして盛り上がっていました。チアキと過ごす日常も気に入ってはいましたが、チアキが自分のことよりもバンドのことを大事にしていることが不満になっていきました。

高校生の頃って、友達にはいつも自分の方を見ていてもらいたかったものですよね。読んでいて何だか懐かしく、そして苦しくなりました。

そんな時に出会ったのがナッキーという少女。ノンノに似ている少女でした。でも、ナッキーの方が大人びて見えたので、ノンノは憧れに似た感情を抱いていきます。


こんな感じで女子高生たちの日常が描かれていく前半。彼女たちの生活ぶりは真面目な高校生とは違うかもしれませんが、抱えている悩みなどはみんなと同じで、きっと女性なら、高校時代を過ごしたことがある方なら、懐かしくなると思います。

ドラッグだったり、売春のような話も出て来てはいましたが、それは渋谷という街だからかな?とか、時代が違うしとかどこか遠い世界の話のように感じてサラッと読み飛ばしていました。

でも後で思い返すと、こういう部分こそが後半に結びついてくることだったんです。

私のように「女子高生はいつの時代も大変だね〜」なんてふわっと読んでいると後半の話の展開についていけなくなるので要注意です。


後半はいきなりミステリ色が強くなっていきます。

不審な火事、焼死体が2体、助け出された記憶喪失の少女、時効になったはずの事件を追う刑事・・・これぞミステリという物が次々と現れます。

記憶喪失になっている少女は、ノンノだと思われていました。彼女の家で起きた火事だったからです。でも彼女は記憶を無くしていて、本当にノンノなのかがわかりません。身内は全て亡くなっていましたし、ずっと彼女の家に来てくれていたお手伝いさんが彼女を「ノンノだ」と言い切ったことで、ノンノだということになったわけです。

でも、ナッキーというノンノによく似た少女がいたことがわかっているので、もしかしたら生き残ったのはナッキーではないか?とも疑えるわけです。

ここからは一つ証拠が見つかる度に、やっぱりノンノだった、いやナッキーだった、と二転三転していきます。そして、放火されたと思われる事件の犯人もわかっていませんし、謎が深まるばかりでした。

前半はこの話はどうやって盛り上がるつもりなんだろう?と疑問で読み進みにくかったのですが、後半は一気読み状態になりました。


古い作品で、内容も古い感じでしたが、後半は面白かったです。ただ再読したいか?というとしないかな。


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2021年10月14日

買った本

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 今村翔吾 著
 「夜哭鳥 羽州ぼろ鳶組」
 (祥伝社) ※電子書籍


すっかりお気に入りになったシリーズ。今回も電子書籍で購入です。


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 佐々木裕一 著
 「姫のため息 公家武者信平ことはじめ(二)」
 (講談社)※電子書籍


こちらもお気に入りになってきたシリーズ。巻数が多いので電子書籍で。


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 池井戸潤 著
 「下町ロケット ゴースト」
 (小学館文庫)


大好きなシリーズです。上下巻ではないのですが、これは2冊とも手元に置いて読まないと続きが気になります。


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 池井戸潤 著
 「下町ロケット ヤタガラス」
 (小学館文庫)


「ゴースト」を読み終わったら、一旦別の作品を読む予定が、一気に続きを読みました。

2021年10月05日

高田郁「あきない世傳金と銀十一」

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 高田郁 著
 「あきない世傳金と銀 十一 風待ち篇」
 (ハルキ文庫)


湯上りの身拭いにすぎなかった「湯帷子」を、夕涼みや寛ぎ着としての「浴衣」に──そんな思いから売り出した五鈴屋の藍染め浴衣地は、江戸中の支持を集めた。店主の幸は「一時の流行りで終らせないためにはどうすべきか」を考え続ける。折しも宝暦十年、辰の年。かねてよりの予言通り、江戸の街を災禍が襲う。困難を極める状況の中で、「買うての幸い、売っての幸せ」を貫くため、幸のくだす決断とは何か。大海に出るために、風を信じて帆を上げる五鈴屋の主従と仲間たちの奮闘を描く、シリーズ第十一弾!!−裏表紙より−


妹・結からの仕打ちにも負けず、幸は力強く立ち上がります。幸の方は結が元気でやっているか心配しているのですが、妹の方は相変わらずの冷たい態度です。しかも、結の店は店の者たちをあまり大事にしていないような噂が聞かれて、読んでいて私も心配になってきました。従業員を大事にしない店は長続きしない気がします。更にはお客にも愛されないと思うので、早々と潰れそうです・・。

良いライバル店として長く存在してほしいんですけどね〜。ダメかもしれません。



幸は売り出した藍染めの浴衣地を何とか江戸の人たちにずっと着てもらいたい、後世まで残していきたいという思いを強くし、どうすればみんなに広く伝わるだろうか?と考えました。

新たな染めの模様を考えることも必要ですし、何か大きな話題になるようなことも必要です。

歌舞伎役者や力士などから知恵をもらったり、染物に携わる職人にも話を聞き、浅草太物仲間の人たちとも話合い、一作を通してずっと悩み続けることになりました。


江戸にやって来た菊栄の商売もうまくいきかけたのに、問題が持ち上がって一時止まることになり、そのことに対しても心を痛める幸。でも菊栄の商売はあまり心配しなくても彼女なら乗り越えるだとうと思えたのでそこはあまり心配せずにすみました。


最終的に幸が下した決断は、同じ浅草太物仲間にとって驚くべきことでした。どんなことだったかは読んでのお楽しみ。なるほど、それこそお客様のことを第一に考える商売、「買うての幸い、売っての幸せ」を貫こうとする幸らしい、五鈴屋らしいやり方です。

度重なる妨害にも負けずに売り切る姿勢には、今回も感動させられました。五鈴屋さんたちと一緒に涙ぐんでしまいました。


最後には更に驚くべき発言&展開が! いよいよ幸による大逆転劇が起こるのか!?

続きが待ち遠しいです。


<あきない世傳金と銀>
「源流篇」
「早瀬篇」
「奔流篇」
「貫流篇」
「転流篇」
「本流篇」
「碧流篇」
「瀑布篇」
「淵泉篇」
「合流篇」


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2021年10月01日

9月のまとめ

少女達がいた街 (角川文庫)少女達がいた街 (角川文庫)
読みにくい、読みたくない描写が多くて目を背けつつ読みました。何とも悲しい物語でした。後味も良い感じにはなっていますが、何となくむなしい気分が残ってしまいました。
読了日:09月03日 著者:柴田 よしき


ほんものの魔法使 (創元推理文庫 F キ 3-2)ほんものの魔法使 (創元推理文庫)
思った内容よりも重かったです。そうか、マジシャンにとっては本物の魔法使いの存在は脅威なんですね。確かにそうか。私はどちらでも単純にすごいと思えますけど。これを読むと誰でも魔法使いになれるというか、身の回りには魔法があふれているという感覚になれます。
読了日:09月13日 著者:ポール・ギャリコ


夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)
シリーズ2作目。今回も面白かった。ハラハラドキドキで火消たちのかっこよさが際立つ話でした。命がけで人の命を救う、それだけを考えて行動するその姿に何度も泣かされました。それに引き換え悪者たちのひどいこと!お陰でスッキリ出来ました。
読了日:09月17日 著者:今村翔吾


戦国「おんな家長」の群像戦国「おんな家長」の群像
なかなか堅苦しくて読むのが大変でした。戦国時代は大好きな時代なのですが、「おんな家長」がその時代にだけ活躍していたとはしりませんでした。もっと物語調の部分があった方がわかりやすかったかもしれません。
読了日:09月28日 著者:黒田基樹




全部で4冊でした。相変わらずの少なさです。

時間がかかってしまった本が2冊ほどあったので・・。

特に印象に残ったのは「夜哭烏 羽州ぼろ鳶組」です。

posted by DONA at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ