2021年09月30日

黒田基樹「戦国「おんな家長」の群像」

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 黒田基樹 著
 「戦国「おんな家長」の群像」
 (笠間書院)


戦乱の世で「家」を支え、時代とともに消えていった女たち  浅井茶々や寿桂尼など、大河ドラマや歴史小説でスポットが当たることも多い戦国時代の女性たち。実際に「家」の長となる女性はいたのか?いたとしたらどのような「活躍」をしたのか、なぜ戦国の終わりとともに姿を消したのか  史料をもとに、その謎に迫る。。−帯より−


初めましての作家さんです。戦国時代は好きなので興味があって「本が好き」で献本申し込みしました。


思ったよりも堅苦しくて難しかったです。私のあまりよろしくない頭では理解しにくい部分がたくさん・・。でも戦国時代は、日本史の中でも好きな時代なので時代背景を思い浮かべながら何とか読めました。

もっと具体例というか、物語調の部分があった方が読みやすいと思います。


この時代の「家」というのは現在でいう「家」とは違って、もっと広い物のことです。現在でいうと市とか県とかに当たるでしょうか。なので、「家長」とは市長とか県知事のことになりますね。

戦が起こることを考えると「国」単位のような気もしますが。


基本的に昔からトップに立つのは男性と決まっていて、この時代は世襲制なので、父親から長男へという流れになっていました。でも男の子が生まれなかったり、幼くして亡くなってしまったりすることもあり、そんな時は弟や従兄弟、次男三男などへと権力が移っていきました。婿養子のようなこともあったようですね。

それでも子どもが跡を継いだ時にまだ幼かったら、誰が「長」として色んなことを決定していくのか?といえば、母親だったり妻だったりするわけです。そうして「おんな家長」というものが生まれたそうです。


おんな「家」長という人は、歴史上に何人かいるそうですが、一般的に有名な人は浅井茶々ですね。豊臣秀吉の奥さんといえばわかりやすいでしょうか。秀吉が出てくるドラマには必ず登場する女性です。

私が見たドラマでは「秀吉の最愛の女性」という紹介がされていて、やたらとベタベタしていた覚えがあります。実際には何人もいる奥さんのうちの一人ですし、正妻でもありませんが。まあこの時代は正妻=一番好きな女性というわけではないでしょうけど。逆に正妻は政略結婚の可能性が高いので、義務感で結婚したというパターンが多そうです。

彼女は、秀吉が存命の時は何もしていませんが、亡くなった後は息子の代わりに「長」として色んな決定を下していたそうです。それは、彼女が出した手紙で明らかだそうです。他国に対しても要望書を出したりしているので、彼女が家を動かしていたと見られるそうです。具体的にどんな手紙だったのかも丁寧に書かれていますが、私にはあまり理解できず。でも何かしらの重要なことを決めていたそうです。


でも結局は女性がそんな決定を下すことに対して、家臣の中には嫌悪感を募らせる人もいました。これは昔も今も同じですね。そして、そんな「おんな家長」は戦国時代を最後に見られなくなるそうです。

そこは何だか不思議です。戦国時代のようにいつどうなるかわからないような不安定な時の方が女性が権力を持てて、安定してからは持てないなんて。

統一政権の成立とその継続は、社会における自力救済を抑制し、それに代わって、政権を中核にした新たな社会秩序を生成し、それを固定化していくものであった。その過程で、女性の政治・軍事からの排除が進行した可能性がうかがわれる。

ということです。・・よくわからないですけど。


今回の総裁選には女性も出馬していましたが、やはり選ばれることはありませんでしたね。でもきっと近い将来には女性首相も出てくれると思うので、その時にどんな国になっていくのか楽しみです。初めての女性は叩かれるでしょうね・・。まあ男性がなっても一度は叩かれるんですけど。日本が世界に誇れるようなそんな国になると良いと私は思います


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タグ:黒田基樹
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2021年09月22日

大門剛明「この歌をあなたへ」

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 大門剛明 著
 「この歌をあなたへ」
 (祥伝社文庫)


小学校の養護教諭、宮坂蒼衣の住む街には悲しい事件の記憶があった。十九年前、クリスマスイベントで盛り上がる公園に刃物を持った男が乱入し、八人もの尊い命が奪われたのだ。ある日、蒼衣の勤める小学校に臨時の事務職員として一人の男が配属される。異常なほど頑なに人との関わりを避ける彼には、誰にも言えない秘密が――。加害者家族の苦悩と救いを描く感動の物語。−裏表紙より−


無差別に何人も殺害するという大きな事件から物語は始まります。場面が変わって描かれたのは、小学校の様子。養護教諭をしている蒼衣の日常が進んでいきます。始めは小学生にして天才歌手の異名をもって、メディアでも活躍している男子生徒とそれを取り巻く環境のようなことが描かれるので、彼を中心とした話になるのだろうと思いました。

蒼衣がその子の悩みに向き合って、小学校生活にもなじめるようにしたり、親との関係を修復したりしていくのか?と。生徒と先生の淡い恋なんて展開になったら読みたくないな、とか色々思いながら読んでいると、その問題はそこまで大きくならず、どうやら同じ小学校で働く臨時の事務職員にスポットが当たっていく様子。

話の展開がどうなっていくのか気になるけど、あまり面白い展開に思えず前半は読むスピードが上がりませんでした。

でもだんだん事務職員の謎めいた行動に興味が出てきて、彼の秘密とそれに振り回される人たちのことが気になって読むスピードも上がりました。彼は一体何を隠しているのか?なぜ人と距離をとって生活しているのか?など気になることがたくさん。


その理由が明らかになってからは、どうして世間の人たちは彼に対してそんな態度をとってしまうのかが不思議でなりませんでした。本人ならともかく、その兄弟は何も関係ないし、攻められる理由もないはずなのに、なぜなんでしょう?その心理が理解出来ませんでした。

同じ家で育ったら同じような考えを持つのではないか?と不安になるのでしょうか。家族でも考えはそれぞれ違うのに、そんなこともわからないということなんですね。不思議です。

とはいえ、そういう立場になったことがないので自分がどんな反応をするのか、絶対に大丈夫と言えるのか、だんだん不安になってしまいました。そういう人に会うことがあったら、「だからどうした?あなたはあなたでしょ?」と軽く言えるような人間になっていたいと強く思います。

被害者家族からの手紙や言葉には泣かされましたし、この人は死ぬまで苦しみから解放されることはないのだろうと思うとより悲しくなりました。


最後は一応明るい雰囲気で終わってくれたのは良かったですが、読み終わってもスッキリ出来る感じではなかったです。


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2021年09月21日

買った本

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 大門剛明 著
 「この歌をあなたへ」
 (祥伝社文庫)


物悲しい内容でした。


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 ポール・ギャリコ 著
 「ほんものの魔法使」
 (創元推理文庫)※電子書籍


ネットで評判が良かったので購入。


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 柴田よしき 著
 「少女達がいた街」
 (角川文庫)


古い作品ですし、内容も古かったです。


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 高田郁 著
 「あきない世傳金と銀 十一」
 (ハルキ文庫)


徐々に盛り返してきました!

2021年09月16日

近藤史恵「わたしの本の空白は」

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 近藤史恵 著
 「わたしの本の空白は」
 (ハルキ文庫)


気づいたら病院のベッドに横たわっていたわたし。目は覚めたけれど、自分の名前も年齢も、家族のこともわからない。夫を名乗る人が現れたけれど、嬉しさよりも違和感だけが立ち上る。本当に彼はわたしが愛した人だったの? 何も思い出せないのに、自分の心だけは真実を知っていた……。愛≠突き詰めた先にあったものとは──。最後まで目が離せない傑作サスペンス長編!−裏表紙より−


記憶喪失物?です。そんな言い方するのか?は知りませんが。

最近まで読んでいた本も記憶喪失の人が出てきました・・。何かそういうのが好きなのか?って感じです。まあ結論から言うと好き・・ではないです。確かにミステリ感は増しますけどね。もどかしい気分になるのがあまり好きではありません。


この物語の主人公はどうやら階段から落ちて頭を打ったことで記憶が無くなったようです。ずっと「わたし」という視点で語られていくので、ケガの原因も想像でしかありません。入院している彼女の元へやって来たのは、夫だと名乗る男性でした。彼はとても優しい人でしたが、会っても何の感情もわかないことに不安を覚えます。

更に夫の妹という人から投げかけられる言葉にもショックを受け、自分には味方がいないのでは?と心細くなっていきました。

身体的には何の問題も無いので、すぐに退院することになり、夫という人の家に帰るわけですが、全く覚えのない家に戸惑うばかり。でも突然、自分の部屋に入るとあるべき物が無くなっている感覚がしたり、妙に落ち着く場所があったり、少しずつ記憶が戻りそうにはなりました。


このまま記憶が戻って終了、だと物語として成立しませんが、ここから謎の人物が現れたり、ケガの原因が本当に事故だったのか?という疑問が出てきたり、次々謎が出てきてミステリとして盛り上がっていきます。

お陰で後半はほぼ一気読み。

謎が解明しても、個人的にはスッキリしませんでしたし、納得できない部分も多かったのですが、一応解決はしました。


記憶喪失の不安さなんて、想像も出来ませんが、自分が誰なのか、どうやって生きてきたのか、全てを忘れてしまうのはどれほど心細いか・・。周りの人をただ信頼して助けてもらうしか方法は無いわけですけど、誰を信頼して良いのかも難しいでしょうね。「家族です」と名乗られたら信じるしかないですから・・。



最後まで読んでみて、やっぱり記憶喪失物は好みじゃないなと思ってしまいました。どうしても、すっきり出来ない気がします。いきなり記憶のすべてを思い出しました!という終わり方をしても嘘くさいですし、記憶の一部は戻っていません、だと解決しきれないですし、周りの人が真実を話してくれても、それは本当に真実なのか?って疑ってしまいますし。

ミステリは全ての謎が解明して、すっきり爽快に終わってほしい!と思ってしまいます。


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2021年09月10日

乃南アサ「犬棒日記」

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 乃南アサ 著
 「犬棒日記」
 (双葉社文庫)


犬も歩けば棒にあたる――。その故事のごとく、一歩外に出てみれば、そこで出会うのは災難か幸運か!? 巧みな人物造形と心理描写で多くの読者から支持される著者が、自ら街で見た人物や光景を日記形式で描く随筆集。直木賞作家の目に、その人は、あの出来事は、どう映るのか。あなたの身近の風景も、著者の手にかかれば、一瞬にして物語になる!−裏表紙より−


普段は、いくらお気に入りの作家さんであったとしても、エッセイというものはほとんど読みません。一番の理由は、お気に入りの作家さんと言っても、作家さん本人が好きというわけではないから、人となりを知りたいと思わないということです。人となりを知ってしまったら作品に作家さんのことを投影してしまって面白くなくなるんじゃないか?とも思ってしまいます。表紙をめくった所に作家さんの写真が載っていることもありますが、なるべく見ないようにするくらい。今野敏さんのようによくテレビでお見掛けする方は知っていますが、ほとんどの方は町で出会っても、テレビに出ていてもわからない自信があります。


なのに、今回はなぜか手に取ってしまいました。何となく表紙の雰囲気と題名とあらすじに惹かれてしまったんですよね。

苦手なエッセイ、最後まで読めるか心配しながら読み始めました。結果は、面白かった!


エッセイ、日記と言いながら、ちょっとミステリっぽい内容だったので、この先どうなるんだろう?とドキドキワクワクしながら読み進められました。

もちろん、ミステリではないのでオチや答えは無いのがほとんどなのですが、それが心地いいと思える内容でした。


普段、あまり人には興味のない私ですが、意外と人間ウォッチングとかは好きで、例えば何かの待ち時間で暇なときとかに道行く人を眺めて、その人の人生や今から何をしに行くのか?などを考えることで時間が潰せることもあります。

それに近い内容だったので読みやすかったのかもしれません。面白い行動をしている人のことを書いて、作家さんが「こういう考えで行動しているのかな?」と想像していることを書く。もちろんそれが正解なのかはわかりませんが、なるほどこの作家さんはそういう風に考えるのね、と思うのが楽しかったです。


毎朝、同じ電車に乗っている見知らぬ人たちのことを想像したことはありませんか?「あれ?この人今日は疲れているみたい」とか「この人何か楽しそうだな」とか「いつもと違う服装だということは、帰りに寄り道するのかな?」とか。そういう想像をするのが好きな方は、この作品は楽しめると思います。

同じ人を見ていたとしても、小説家だったらこんな風にまとめることが出来るんだなと、変な感心もしてしまいました。今後はエッセイもたまには読んでみようかな?


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posted by DONA at 14:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:乃南アサ

2021年09月01日

8月のまとめ

炎天夢 東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)炎天夢 東京湾臨海署安積班 (ハルキ文庫)
今回も面白かった。安積係長の誰に対しても誠実に対応する感じが素敵でした。ただ、安積班のメンバーの活躍が少なかったのは残念。殺人事件になると捜査本部が出来てしまいますからね〜。事件は大きい方が読みごたえありますが、小さい(?)方がメンバーの活躍が読めて嬉しいというジレンマ。
読了日:08月03日 著者:今野 敏



犬棒日記 (双葉文庫)犬棒日記 (双葉文庫)
苦手なはずのエッセイもさらさらと読めました。日記というより短編小説のようでした。ついついオチを求めてしまうのですが、オチは無くても色々想像することが出来て面白かったです。自分が同じ人に遭遇してもここまで色々感じることはあるのかな?と思ってしまいました。
読了日:08月07日 著者:乃南 アサ


わたしの本の空白は (ハルキ文庫)わたしの本の空白は (ハルキ文庫)
話の展開が見えず、ほぼ一気読みでした。予想出来た部分もありましたが、そうきたか〜という展開があって面白かったです。
読了日:08月10日 著者:近藤 史恵



この歌をあなたへ (祥伝社文庫)この歌をあなたへ (祥伝社文庫)
無差別殺人を犯した兄に翻弄される兄妹の物語。殺人を犯した本人では無いのに、どうしても差別的な目で見られてしまう・・。自分に置き換えて考えるのはとても難しい問題ですけど、そういう人と知り合うことがあったら自分は差別せずに接することが出来る人になりたいと思います。涙無しでは読めない物語でした。
読了日:08月18日 著者:大門剛明



あきない世傳 金と銀(十一) 風待ち篇 (ハルキ文庫 た 19-26)あきない世傳 金と銀(十一) 風待ち篇 (ハルキ文庫)
結との仲はどんどん離れていきますけど、幸の商売は何とか上向いて行きそうな気配です。正直に真っ当に商売していれば、周りから助けてもらえますし、お客にも愛される店になるんですね。これからも良い商売が出来ますように。
読了日:08月24日 著者:高田 郁




全部で5冊。相変わらずの少なさですが、充実した読書でした。

印象に残ったのは「炎天夢」「あきない世傳<十一>」です。

posted by DONA at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書:まとめ